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第38話

俺も話に混じりおやじの修行時代の失敗談を聞いたり揶揄ったりして3人で楽しく過ごした。 時間を見るともう9時になっていた、もう、かれこれ3時間近く居たようだ。 「香坂、明日もあるからそろそろ帰るか」 「えぇ、もうそんな時間なんですか?大将の話が楽しかったから長居しちゃいました」 名残惜しそうに話すからおやじも嬉しそうに 「また、是非おいで、1人でもいいから」 「課長が連れて来てくれ無い時は1人で来ます」 その遣り取りを聞いて 「おいおい、俺は除け者か。絶対1人では駄目だからな」 笑いながら釘を刺して置くのを忘れない。 香坂は素直に「はい」って返事するのを見て がはははっておやじは大笑いしてる。 香坂がトイレに行ってる間に会計し、その時におやじが他の客もいるからか小声で 「いい子だな。あんなべっぴんさんなのに気取って無く素直だ。お前が誰かを連れて来るって事は大切な人なんだろう、大事にしてやれよ。また、連れて来い」ってしみじみ話す。 おやじは俺の性癖を知ってる、恋人で大切な人だと薄々判って香坂の前では黙っていたようだ。 おやじの話を聞いて俺も小声で 「初めて愛した人だ。今後そういう相手は出逢わないし俺があいつ以外目にはいらない。ベタ惚れだ」 恥ずかしい事言ってるなと思うが正直な気持ちをおやじにも知って欲しかったから照れ笑いし「おやじにも会わせたかったからな」って話すと嬉しそうな顔をして 「お前、雰囲気が柔らかくなったな。前は気を張って神経研ぎ澄ましてる感じだったがそれが無くなってる今のほうがいいぞ。幸せなんだな」 心配だったとおやじは話す。 おやじの気持ちが心に染み渡る。 「そうだな。今迄、誰かと過ごしてこんな幸せな気分になった事が無かった。誰かと一緒に過ごし片時も離れたく無いとか相手の楽しそうな顔を見るだけでも幸せに感じるなんて思っても居なかった。香坂と出逢ったお陰だな」 また、恥ずかしい事言ってしまった、もう惚気に近いかも知らないと笑ってしまう。 「お前からそんな話が聞けるとはな。長生きするもんだ」 がはははとおやじが笑うと丁度トイレから出てきた 香坂が「大将、楽しそうですね。何か面白い話でもしてたんですか?」 仲間にいれて欲しいらしいが「いや、楽しいって言うかこいつが照れもせずに馬鹿な事を言うから笑っちまっただけだ、何でも無いよ」 また、がはははと笑って誤魔化していた。 香坂は良く判らないって顔をしていた。 「香坂、沢山食べたか?」 「はい、どれも美味しかったですお腹いっぱいでもう入らないです」 満足したようだ。 「じゃあ、帰るか?」 「はい、あのお会計お願いします」っておやじに言うから 「もう払ってあるから気にするな」 年上の俺が払うのは当たり前だという風に話すと 「課長、この間も支払いして頂きました。いつもだと申し訳ないですから今日は俺が払います」 本当こういうとこ律儀だよっていうか悪く言えば甘え無い、良く言えば出してもらうのが当たり前と思わない所がいいのか?良く判らん。 他の奴らにはどうか知らないが俺には甘えて欲しいもんだ。 「いいからそんな事気にするな。それに誘ったのは俺だぞ、だったら俺が払うべきじゃ無いのか」 そんな遣り取りを見ておやじが 「金がある方が払うのが当たり前だ。黙って甘えなさい」って香坂に優しく諭す。 「……いつもすみません。ご馳走になります」 「香坂、美味しかったか?」 「はい、とても」 「美味しそうに食べる香坂を見ておやじも喜んでいるから又、来ような」 「はい、ぜひ俺からお願いしたい位です。また連れて来て下さい」 香坂の返事におやじもニコニコして嬉しいそうだ。 「じゃあ、おやじまた来るから」 挨拶して店を出ると香坂も 「大将、ご馳走様でした。美味しかったです又、来ます」 挨拶して店を出た。 本当こういうとこ好感持てる可愛いと思う。

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