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第52話

「田口、彼女居たのか?」 「はい、まだ付き合って半年ですけど友人の紹介で」 「どんな人なんですか?」 佐藤がにやにやして聞く 「どんなって普通のOLだけど。性格は優しくって大人しめかな、綺麗系より可愛い系だな」 「結婚するんですか?」 「いや、まだ考えてないがこのまま付き合っていけばそれもあるかもな」 「へぇ、そろそろ年貢の納め時ってやつですか。そう言えば課長は居ないんですか付き合ってる人?実は会社の女の子が課の飲み会って言ったら聞いてきてって煩くって」 頭をぽりぽり掻いて聞かれ 上野さんも「実は私も言われてるんです」 田口も興味津々で聞く体勢をとる。 会社の女の子に広めてくれれば助かると 「俺の事か。付き合っている人は、居る」 正直に話す。 「ですよね、課長クラスの人が居ない訳無いに決まってるのに、何夢見てるんだか」 「そうよね、皆んながっかりするだろうけど」 「課長、どんな人ですか?」 「そうだな、外見は絶世の美人で性格は素直で可愛いな」 「えぇ、そんな人居ます?」 「課長が言う位だから、相当レベルが高いんじゃないかな、どこで知り合ったんですか?」 「馴れ初めは、秘密だが俺も初めて出会った時に一目惚れして口説いた。今じゃあベタ惚れかな。まあ、俺の話はここまでだ」 チラッと香坂を見ると酔ってるのか話を聞いて恥ずかしいのか頬が薄っすら赤くなって居る姿が可愛い。 「うわぁ、課長にここまで言わすなんて凄いですね」 それから田口と佐藤はアメリカの人だとか遠恋が何とか言っていたが、ほっといて居た。 余り余計な事を話し、ばれる訳にはいかない。 俺は別に構わないが香坂は開き直れるタイプじゃ無いからだ。 恋愛話になってマズイなぁと考えていたら、やっぱり佐藤さんが興味津々で、課長に振ってしまった。 俺は平常心を保つように努力してたが、課長がなんて話すか気になった。 会社の女の子達が課長に興味あるのは仕方ないと思っている、仕事も出来てこんな美丈夫な男の人は早々居ない。 課長が付き合ってる人が居るとはっきり言ってくれて嬉しいかったが初めて聞く内容に照れて赤くなっていると 「やっぱり居ない訳無いわよね、会社の子達、がっかりするけど仕方ないわね。課長があんなに言う位だからどんな美人の女性かしらね。並んで歩くと美男美女って事かしら」 上野さんがこそっと俺の耳元で話す。 俺は浮かれてた気持ちから、ガ-ンと頭を叩かれた気がした。 美人って話す位だから女性に決まってる、なんて勘違いしてたんだ。 今度は田口さんと佐藤さんがアメリカの人だと騒いでいるが課長は否定しなかった。 俺は気持ちが沈んでいくが表面には出さないように努めていた。 「今日はありがとう。少人数で大変だが皆んな頑張ってくれて居る、これからも宜しく頼む」 課長の締めの挨拶で宴は終わり店の外に出る。 「上野さん10時回ってますからタクシーで送りますよ。同じ方向だから香坂一緒に乗って行け」 言われ迷って居ると上野さんが 「香坂君飲み過ぎかな、顔色悪いよ。一緒に乗っていきましょ」と誘われたら断れなくなり「じゃあ、すみませんお言葉に甘えて」 田口さんと佐藤さんに挨拶し別れ、俺と課長.上野さんはタクシーに乗り、課長は上野さんに普段なかなか話す事が無いからと 「いつも良くやって貰って助かってます」 労いの言葉を掛けて 「いいえ、大した助けはしてませんよ。でも皆んな良い子でこっちも元気貰ってます」 上野さんも嬉しそうに応えていたのをぼんやり眺めていた。 それから上野さんと世間話をして過ごし自宅に送り届けタクシーの中は2人になり 「香坂、このまま俺のマンションに来ないか」 誘われたがさっきの事が頭から離れず、少し1人で考えたかった。 「すみません、飲み過ぎたみたいで今日は自宅に帰ります」と断った。 「そうか、確かに顔色悪いな。自宅の方がゆっくり出来るか、ん、解った。ゆっくり休めよ」 頭をぽんぽんして心配してくれるのに罪悪感があるが今日はこの気持ちのまま一緒に居られない。 俺のマンションの前で降りタクシーが走り去って行くのを見送りマンションに入って行く。

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