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第55話
LINEきた事にホッとしたが、今日も会えないと言われ具合が悪いから仕方ないとは思っている。
責めて見舞いに行き、顔見て安心したかったが香坂の移ると申し訳ないと言う気遣いに、無理に行って、香坂に気を遣わせても良くならないじゃないかと無理強いは出来なかった。
コ-ヒ-を飲みながら今日はどうするかと考え、荷物の整理もあらかた終わったしな。
昨日は部屋から出て無いから今日は出掛けるかと着替えた。
デパートに行って、香坂にエプロンでも買うか。
何色が良いかな?淡いパステルカラ-系だな。
ピンク、オレンジも似合うが女っぽいか、やはりブル-かグリ-ンが妥当な線だな。
俺が買ったエプロン付けてキッチンに立つ姿を想像するとニヤけてしまう。
色は実際見て決める事にし、ついでに車も見て来るかと行き先を決め部屋を出てその日は過ごした。
会社に着き、いつものようにパソコンを立ち上げメ-ルチェックし、画面に映る顔を見て、目が腫れて無くって良かったとホッとしていた。
暫くすると上野さん、田口さん、佐藤さんと次々「おはよう」と挨拶しながら出社して席に着く。
「香坂君、金曜日顔色悪かったけど、大丈夫?」
上野さんが声を掛けてきたので
「すみません、心配掛けました」
応えてた所に、課長が出社してきた。
「おはよう、金曜日はお疲れ。そうだ、香坂、具合はどうだ?」
「今、上野さんにも話してたんですが、御心配お掛けしました。まだ、少し怠いですが大丈夫です」頭を下げ席に着く。
その日はどうにか仕事に集中する事でやり過ごした。
次の日、仕事の合間に缶コ-ヒ-でも買うかと自販機に向かって歩いていると事務の子2人に「香坂君」声を掛けられ給湯室に手招きされた。
「香坂君、成宮課長が凄い美人のアメリカ人と付き合ってるって本当?噂になってるんだけど」
何て応えたらいいかと思ったが、ありのままに話した
「……はい。歓迎会の時に本人が話してましたから」
「やっぱり噂は本当なのね。ショック」
「でも、アメリカだよ。近くに居る人の方がいいに決まってるわよ。まだ、チャンスはあるわよ」
目の前で、そんな会話を聞いて女の子は強いなぁと変な感心をして、少しはその強さを分けて欲しいと思った。
昼休みに田口さんと佐藤さんも会社の子に、課長の付き合っている人の話を聞かれていたらしく「課長、凄え人気だよな」と話していた。
女の子達の話を聞いて益々俺は、彼女の存在を確信して、どんどん気分は沈んでいった。
出社して声を掛けると普通に接してるが元気が無いように感じた。
まだ、体調が戻らないのかも知れないとその日はそっとして、夜にはいつも通りおやすみLINEを送り直ぐに返信きた事にホッとしたが、日を追う事に香坂の様子が可笑しいと気付き始めた。
本人は普通にしているつもりらしい、実際香坂の様子に気付く者は居ないが俺には解る。
会社で目を合わせない、夜のおやすみLINEは既読するが返信が無いときもある。
火曜の夜LINEで♪*食事に行かないか♪*と誘ったが
♪*すみません、用事があるので♪*と断られた。
極め付けは、金曜日就業間近に佐藤が
「香坂、急で悪いが合コン1人来れなくなって、困ってるんだ。頼むよ」
手を合わせて誘っていた。
そんな話しが聞こえ、断るだろうと思っていたが
「……良いですよ。俺も飲みたいと思ってたんで」
まさか行くとは思わなかった。
何考えてるんだ、彼氏の前で、堂々と浮気しに行くと宣言してるようなものだと顔に出さず心で言って動揺していた。
それから暫くして2人で
「すみません、お先に失礼します」
挨拶して会社を出て行った。
俺は仕事をしながら考えていた、最近の香坂の様子が可笑しい原因は何かを……自分的には何も心当たりが無い。
何か悩みか?それとも俺に不満でもあるのか?色々頭に浮かんでは消えを繰り返すが解らない。
もし、何かあるなら俺に相談して欲しいと思いどうするか考えた。
7時から始まった合コンは、女の子は3人で佐藤さんの女友達の会社の子達らしい。
お洒落なダイニングバーで自己紹介から始まった。
先輩の女友達は姉御肌の美咲さんで会社の後輩で派手目な葵さん、可愛い系美也さん。
男は佐藤さん、俺、佐藤さんの大学時の友達山下さん。
山下さんとは何回か佐藤さん主催の合コンで会っている。
知ってる人で気心も知れていた。
「また、人数合わせ?」
軽く挨拶され、いつも人がいない時にしか来ないのを知っている山下さんに苦笑いで応えた。
佐藤さんと美咲さんが場を盛り上げ、楽しく合コンは進み、俺もいつもより飲んでいた。
隣の美咲さんが佐藤さんの昔の面白話をして笑い飲んでいたが最近寝不足だった際か、いつの間にか美咲さんに凭(もた)れ掛かって寝てしまっていた。
美咲さんに「香坂君、香坂君」
肩を揺り動かされ、ハッとなって起きた。
合コンの最中だと気付き
「すみません、寝てました?」
「10分位よ。寝てて可愛いかったけどスマホ何回も鳴ってたから起こしたの」
いい子いい子と頭を撫でられ
「ありがとうございます。ちょっとすみません」
スマホを持って席を外した。
少し静かな場所で、スマホを確認すると課長からの着信が3件、LINEが2通あり、LINEを開くと
♪*合コンは楽しんでるか?1次会で帰れ。終わり次第、俺のマンションに来い♪*
♪*必ず1次会で帰れよ。待ってる♪*
時間を確認すると合コン始まって1時間位でLINEが入っていたようだ。
既読にもならないから電話入れたのかも。
今の時間は、9時半だから後30分位で合コンも終わると思うけど……。
合コンの場に戻り、鞄を持ち美咲さんに
「すみません。友達と約束してたの忘れてて、その電話だったみたいで、すみません抜けますから佐藤さんに言っておいて下さい」
会費を渡してその場を後にした。
タクシーにしようか迷ったけど少し酔いを覚ますのと考える時間が欲しかったから電車にした。
電車で揺られながら、課長怒ってるのかな?既読も返信もしなかったし、LINEの内容も怒ってるっぽいし。
少しずつ離れようと上司と部下に戻ると決めたのに、呼ばれれば会いたいから直ぐ行ってしまう自分に苦笑いする。
行ってどうなるのか解らない、課長が怒ってそんな奴とは付き合えないって言うならそうしよう。
元々、彼女の者なんだから俺は…………。
自分の気持ちを持て余したまま、纏まら無い考えで課長のマンションに向かう。
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