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第56話

香坂にLINEを送り風呂に入りスマホを確認すると既読も返信も無かった。 LINEだと気づかないかも知れないと電話を何回か、掛けるが繋がらないのに少しイライラしていた。 部屋で何もする事が無く「来るのは11時頃か」と呟き香坂は必ず来ると信じて待っていた。 ピンポン♪…。 時間を確認すると10時半近かった、思ったより早かったなと考え、ドアを開けると予想通り香坂が俯いて立っていた。 「入れ」 部屋に通す時に、酒と香水の匂いがしたのに顔が歪む リビングで立ったままの香坂に 「香坂、風呂に入れ。酒と香水の匂いがする。今日は話があるから帰さない」 腕を引っ張り浴室に連れて行く。 黙ったまま風呂に入ってる香坂の為に、トレ-ナ-とハ-フパンツを用意して置いておく。 浴室から出てきた香坂は俺が用意した服に着替えて、髪はタオルで拭きながら 「着替えまですみませんでした」 頭を下げ俯いている。 「いいから、そこに座れ」 ソファの前のラグに座らせて、洗面台からドライヤーを持ってくると香坂の背後のソファに座り髪を乾かし始める。 「……あの…」 「話は後だ」 これからどうやって、話をするかと考えながら髪を乾かしていくとふわふわした手触りの良い髪になってきた。 「良し、乾いたぞ」 頭をぽんぽんしキスを落とし、ソファから降り香坂の背後から抱きしめ肩に顎を乗せ首筋辺りの匂いを嗅いだ。 「香坂の匂いだ」 やっとホッとした。 抱きしめながら「さて、香坂。最近可笑しかった理由を聞かせてくれないか?何か悩みかそれとも俺に不満でもあるか?」 耳元で言われ顔を見ないで話した方が話易いけど 「……課長に不満なんて」 「じゃあ何だ、俺には言えない事か?」 「……歓迎会の時……課長、付き合っている人がいるって話……」言ってしまった。 「いるって言ったがそれがどうした?」 香坂の気持ちも考えずに言ったのがまずかったのか、確かにあの日以来、可笑しくなったような気がする。 「……絶世の美人で性格も素直で可愛い人…」 そんな人に敵わない。 「本当の事だ」 恥ずかしいのか皆んなの前で言ったから拗ねてるのか 「………」 「……どうした?黙ってたんじゃ解らない」 「……解りました。やっぱり俺には無理です、今日は帰ります。これからは上司と部下に戻るように努力します。彼女とお幸せに」 抱きしめられていた手を振り解き立ち上がり鞄を持って部屋を出ようと歩き出す。 何だ?彼女って、身に覚えの無いよく解らない話で、混乱するが帰ると言う香坂を追いかけ、玄関前で捕まる。 「彼女って何の話だ。何か誤解してるんじゃないのか?取り敢えず部屋戻るぞ」 腕を掴んでソファに座らせ、その前に膝をつき手を握り締め 「俺も混乱してる。何か誤解がある、1つ1つ整理して話そう。香坂が思ってる事を言え、それに俺が答えるから」 「……課長、付き合ってる人がいるって」 「いるって答えたよな歓迎会の時に、香坂の気持ちも考えずに言ったのは悪かったと思ってるが」 「俺の事は別に……そんな絶世の美人で可愛い彼女敵わないですよ」泣きそうになる。 「はあぁ、何言ってるんだ。付き合っているのはお前だし、絶世の美人で可愛い人ってお前の事なんだけど」 「課長、何言ってるんですか?美人って男には使わないんですよ」 「他の奴は知らないが、俺には香坂は美人にしか見えない。他は?」 段々誤解が解ってきたぞ。 「……アメリカにいる彼女って皆んな言ってます……それに田口さん達にアメリカの人かどうか聞かれて否定しなかった」 「あれは面倒だから否定も肯定もしなかっただけだ。近くにいると解ると誰だと詮索されるだろう。俺は別に香坂との事知られても構わないが香坂はバレたくないんだろう?だったら勝手にアメリカ人って思ってくれた方がいいだろう」 「じゃあ、付き合ってる人は俺だけですか?」 恐る恐る聞く。 「当たり前だ、俺は香坂だけだ。そんないい加減な奴だと思ってたのか?」 「だって…課長、素敵な人だしアメリカにいても可笑しく無いしだから俺は日本にいる時の恋人紛いかセックスフレンドかと悩んで……,でも彼女がいるなら諦めるしか無いと課長を独り占めできないなら」 香坂の話を聞いてムッとしたが 「俺はアメリカと日本にそれぞれ恋人作って、二股描けるとかセックスフレンドとかどうしてそんな話になる。先週あれだけ甘い雰囲気だったのに」 「だって……色々考えて……それに…課長に1度も好きだとか愛してるとか言われて無い事に気付いて……俺だけが恋人だと思ってただけなんだと……」 涙が溢れて頬を伝うと親指で拭ってくれ 「……そうか悪かった。悩ませたな。“R”moneで初めて逢った時に一目惚れして付き合えたことに浮かれてたんだな。京都の夜に香坂が意識無くなる前に愛してると言ったが聞こえて無かったみたいだな。いつも愛してると思ってるから言葉に出してたつもりだった。これからは不安にならないように、いつも言葉に出す」 香坂の唇に軽くキスし 「愛してる。過去も未来もお前だけにしか言わない」 改めて告白した。

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