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第87話

俺の腕の中で泣いていたミキが静かになったと思って、顔を覗き込んだら、泣き疲れて寝ていた。 そおぉっと、抱き上げ寝室に運び寝かせる。 俺も横になり、涙の跡が残る綺麗な寝顔を見て、大変な思いしたんだな。 家族の思い出が残る家に居られず、1人寝も出来ない程ショックが大きかったのか。 祐一が言ってた「ミキは寂しがり屋」の意味がやっと解った。 もう、寂しい思いはさせない、俺がずっと側にいるからな。 それにしても、ミキが女と付き合っていたとはな、予想外だった。 でも、良く考えれば、こんな綺麗な奴なら男も女も魅了されるだろうな。 今まで、男ばかり気にしてたが、これからは、女にも気をつけないとな、益々、目が離せ無い。 モテる恋人持つと苦労するが、それを上回る位の幸せを俺にくれる。 ミキの笑顔.恥ずかしがる姿.可愛い事をフイにする所.何よりミキの存在そのものだ。 ミキの家族には悪いが、ミキを残して逝ってくれて感謝してる。 その代わり、俺が家族になって幸せにすると誓う。 そんな事を思い、ミキの寝顔を見て抱きしめて目を閉じた。 「ミキ…起きろ…ミキ」 「うぅん…マコ?…まだ…眠い」くっくっく。 寝ぼけて真琴君と勘違いしている、まだ、俺がミキと呼ぶのに慣れて無いようだ。 「マコじゃ無いぞ…ほら…ミキ」 「…えっ…まさか…祐さん?」 カバッと起きて俺の顔を見て 「あっ、課長」 祐一と言われた事にムッとして 「何だ、祐一に起こされた事あるのか?」 わざと言ってやる。 慌てて「違います、違います。ミキって呼ぶのマコと祐さんだけだと思ってたから…ごめんなさい」 「昨日からミキって呼ぶ許可は貰ってるが、まさか忘れた訳じゃ無いよな」 「忘れてません。まだ、慣れてなくって、すみません」 「ま、いい。起きろ、今日は俺が朝食作ったから」 「えっ課長が……直ぐに起きます」 リビングに行き「うわぁ、美味しそう。ありがとうございます」 食パンとスクランブルエッグ、コ-ヒ-の簡単な朝食だが、こんなに喜んでくれるならまた、作ってやろう。 座ってるミキに近寄り「ミキ」声を掛ける。 上を向く顔にチュッとキスし「おはようのチュッだ。挨拶は軽くだろ」ニヤっと笑い席に座る。 目の前で照れて「もう、課長ったら、いただきます」誤魔化す様に、スクランブルエッグを食べ「美味しい」と言って食べていた顔が何とも愛おしい。 俺も食べながら「今日は、部屋でゆっくりするか、そうだなぁ、DVDでも見よう。後、俺がミキって呼ぶんだから、ミキも俺の事名前で呼べよ。プライベートでの敬語もよせ、いいな」 「…課長。でも、普段呼んで癖になって、会社で名前呼んだらマズく無いですか?ミキって呼ばれるのも、それがあったから…」 「バカだなぁ。俺は一応会社の噂では、えらい美人の彼女がいるらしいからな。もし、間違えてミキって呼んでも彼女の事だと思うだろう。ま、俺はそんなヘマしないがな。ミキが俺の名前呼んだとしても、誰も下の名前なんて覚えて無いし、言われたら親戚の人と同じ名前だからとか誤魔化せばいい……ミキ、名前を呼んで欲しいんだ」 「…解りました……成宮さん」 ガクッとした。 なんで名字なんだ?ミキは天然だからな、それにしても……。 「おい、ミキ。なんで名字なんだ?下の名前呼べよ。まさか、俺の名前知らないのか?」 「えっ知ってますよ…えっと…伊織さん」 照れて顔を手で覆う姿が可愛いが 「さんは要らない」 「えぇ、それはハ-ドルが高いですよ。伊織さんだけで精一杯です」 仕方無いと諦めて 「始めはそれでいいが、その内、伊織って読んでくれ」 「はい、伊織さん」 頬を染める、こんな事でも頬を染める純粋さに心が洗われるようだ。 「じゃあ、今日はゆっくりして、ミキが俺の名前呼ぶのに慣れる日にするぞ」 「はい」 それから、交代でシャワー浴び、俺はミキの髪を乾かしてやる。 「ほら、乾いたぞ」 ふわふわの髪にキスし、いつもの体勢でミステリー作品のDVDを見る事にした。

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