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第93話
結局、日曜日は昼近くに起き、近くを散歩がてら歩き昼は外で食べた。
その後は店を探索して過ごし、帰りにスーパーに寄りミキが作った夕飯を美味しく食べ、テレビを見てイチャイチャ過ごした。
「もう、こんな時間。明日、仕事あるから帰りますね」
ミキに言われるまで時間を忘れていた。
はあ、ミキといると時間が過ぎるのが早く感じる。
「ミキ、これ渡しておく」
帰る用意をするミキに合鍵を渡すと、両手でしっかり握りしめて
「良いんですか?」
伊織さんにフイに合鍵を渡され感激していた。
「良いも何も恋人兼家族なんだから、持ってて欲しいんだ。いつでも勝手に入ってていい」
伊織さんの言葉に涙が溢れ「ありがとうございます」と言うだけで精一杯だった。
そんな俺の涙を唇で吸い取り見詰められ
「ミキ…愛してる。いつまでも一緒にいよう」
またまた、泣かす言葉をくれるから、俺は号泣してしまい、伊織さんは必死に宥めてくれた。
俺のマンション前で、車を止めた伊織さんに
「ちょっとだけ待ってて下さい」とお願いし、足早に部屋に行き、目的の物を2つ手に取り、また、足早に戻り助手席に乗り込んだ。
「はぁはぁはぁ、お待たせしました…はぁはぁ伊織さん、コレ俺からです」
息が整わないが伝わったらしく、急に俺を抱きしめ
「ミキ、ありがとう。嬉しい。ミキもこんな気持ちだったんだな」
ギュッと更に抱きしめるから「伊織さん、外ですよ」と窘めると体を離す。
それが寂しく感じた。
俺が渡した物は、合鍵とシ-グラス付きのキ-ホルダ-だった。
今、シ-グラスにハマってて、色々作ってる最中で、この間作った物だった。
大した物では無いが、丁度良いかもと思って、一緒に持って来た。
「これで2つ目だな。俺の鍵に付いてるのは」と言って、前に一緒に買ったイルカのキ-ホルダ-と一緒に、合鍵とシ-グラスのキ-ホルダ-も付けて嬉しそうにブラブラと振って見せたていた。
余り車を止まらせて置くわけにも行かないと思い、名残惜しいけど車を降りる。
「ミキ、見送るからマンション入れ」と言われ、直ぐそこなのにと思うが、伊織さんの気持ちが嬉しいかった。
「はい、送ってくれてありがとうございます。気を付けて、おやすみなさい」
足早にマンションに向かった。
ミキを送り届け、部屋で貰った合鍵を見詰め、嬉しさが増してきた。
俺の方はいつ渡そうかと思っていたが、まさかミキがくれるとは思わなかったからだ。
手に取り、ブラブラと揺れるイルカとシ-グラスのキ-ホルダ-。
どんどんミキとの物が増えていく。
また、1つミキからの宝物を貰った日だった。
「ミキ、夏休みどうする?」
「伊織さん、まだ1カ月位先ですよ。今の所、予定ありません」
「そうか、じゃあ、夏休みは南の方に旅行に行かないか?そうだなぁ、宮古島か石垣島辺りでどっちか良い方。2泊3日か3泊4日でどうだ」
「えっ、ほんとに?行きたい」
「夏休み1週間あるから、2~3日はゆっくりして旅行に行こう。後、ミキの家族の墓参りもしよう」
俺が夏休みの計画を話すと
「……伊織さん…ありがとう」涙ぐむミキ。
「ミキは案外泣き虫だなぁ。墓参りはいつか行きたいと思っていたんだ。だから、俺も連れて行ってくれよ。挨拶したいから」
「だってぇ…伊織さんが泣かすような事言うんだもん…凄く…嬉しい」ポロポロと涙を流す。
涙を唇で吸い取り抱きしめ額を合わせ話す。
「ミキの家族は俺の家族なんだから…な。後、旅行の件は俺が予約する。折角だ、スキュ-バ-ダイビングは無理だが、シュノ-ケルならできるだろう」
「はい、伊織さんありがとう。何から何まで、俺も何か手伝う事あったら言って下さいね」
泣き笑いで話す姿が可愛い。
「そうだな、ミキはずっと側にいて、俺を癒してくれればいい。これから少し忙しくなるから家に仕事持ち込むかも知れない」
「じゃあ、その時は言って下さい。俺、邪魔にならない様に、自分のマンションに居ますから」
「いや、ミキ、持ち込んでも2時間位、書斎でやればいいから俺の部屋に居てくれ。同じ空間に居たいんだ。ミキは退屈で嫌か?」
「伊織さんが良ければ、俺は一緒に居たいです」
「じゃあ、決まりだな」
こうして、それからは平日はいつものおやすみLINEをし、金曜は早く帰れる時はミキを俺の部屋に呼び、遅くなる時はミキの部屋に泊まる。
土曜は俺の所に泊まり、日曜の夜に送るというパタ-ンが出来てきた。
ミキも俺が書斎に閉じ籠り仕事をしている時は掃除.洗濯.料理と本当に奥さんみたいだ。
それと趣味のアクセサリ-作りをして過ごして居た。
ミキが居ない平日、残業で遅くなり、部屋にアクセサリーを作る材料や雑誌が、きちんと整理され置かれてるのを見ると、ミキが居ない寂しさを感じた。
アクセサリー雑誌やファッション雑誌をパラパラとめくり戻そうとした時に、ミキが作ったであろう作品が置いてあった。
コップらしき物を手に取り見ると、コップにシ-グラスが綺麗に貼られ、中にはアロマキャンドルが入っていた。
どうやら、アロマキャンドルホルダーらしい。
キャンドルに火を灯すと、ゆらゆら揺れる火がシ-グラスに反映し、ステンドガラスのようになり、優しい光を作り上げていた。
ふわぁっと、アロマの香りがし、ミキの部屋の匂いがした。
まるで、ミキが側にいるようで、さっき感じた寂しさが、無くなるような気がした。
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