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第94話

カタカタ…パソコンを打っていると 「成宮課長、ちょっといいかな?」 アジア担当の杉山課長に会議室に呼ばれた。 会議室に入ると国内担当の嶋田課長が座って待っていた。 「どうされたんですか?」尋ねると「まあ、座ってから話そう」着席を促され座る。 「いやぁ、アメリカで‘手拭い洗顔’が評判良いそうで、雑誌にも掲載されたみたいだねぇ」 嶋田課長が口火を切る。 「はあ、徐々にですが、売上げは伸びてますが、それがどうかしました?」 「それがねぇ、韓国.タイ.台湾の雑誌にアメリカで話題の美容洗顔って掲載されて、今、問合せが凄い。手拭いの在庫が無くなりそうなんだよ。うちとしては嬉しい悲鳴なんだが」 「アジアで韓国とタイは美容に敏感な国だからねぇ。それで国内でも、徐々に問合せがきている。そこで国内.アジア.アメリカで宣伝を合同で製作し、経費を浮かせようと考えて、成宮課長を呼んだんだが」 アジア担当の杉山課長と国内担当の嶋田課長がそれぞれの思惑があって話していた。 ここは少し恩を売って置くのが得策と判断し 「それは良い案ですね。こちらも、もう少し宣伝しようかと考えていた所だったので」 だが、甘い汁も吸わせて貰うつもりだ、顔には出さず心の中で思った。 「うちの香坂が提案して、ある程度、店舗用ポップとお客様用洗顔手順.注意書きの紙、英語書きですが、原案が出来てるので、それを各言語に訳せば、時間と労力が削減出来ると思います。後は店用に、洗顔手順をモデル使って、DVDを作って店内で流して貰うように、DVD製作しますか?」 DVDかビデオでも作ろうと思っていたので、丁度良いと考え提案する。 「ほう、ある程度、宣伝用は出来てるのか、それを訳すだけなら助かる。うちは早めに、仕掛けていきたいからな。ところで、在庫の方なんだが、まさかの想定外で、あまり在庫が無いんだが…」 心の中でニヤリとし 「ああ、在庫ですか?ここ最近、売上げ伸びてたので、いつもの倍発注してます。後で、確認しますが、もし宜しければお渡しする事は出来ると思います。その後は各自でお願いします」 「はあ、助かった」 「うちにも、少しだけお願いできないか?」 「はい、後で個数メ-ル下さい。確認し、どの位お渡しできるか、また追って連絡します」 「じゃあ、DVDの方はスタジオとモデルは国内の方に任せてくれ」 「お願いします。じゃあ、DVDのカット割と手順テロップの方は、うちの香坂に作らせて、ポップの方と一緒にメ-ルさせます。元々、香坂が持ってきた案件で、手拭い専門店で色々聞いてきてるので、詳しいでしょうから」 「それは助かるな」 「有り難い」 「その代わり、宣伝費は考えて貰います。色々削減出来て、効率も良くなってますからねぇ、折半だとうちが割が合わ無いです」 案にそちら側で大半持って欲しいと遠回しに話す。 「そうきたか。う~ん、仕方ない。アジアで4割、国内で4割、アメリカで2割でどうですか?今、アジアで日本ブ-ムが起きつつあるから、うちはこれを足掛かりに中国に名前と商品をどんどん売っていきたいと考えている」 「うちも国内シェアとやはり会社名を売りたいんで、まあ、在庫の件もあるし、これだけお膳立てされてれば仕方ないですね。それに、纏まった方が、コストが安く済みますし自分とこだけで宣伝費出すよりは安い」 「それで手を打ちましょう。うちも、これから助けて頂く事があると思います。宜しくお願いします」 さっきは強気に出たが、今度は下手に出る。 杉山課長が「流石、アメリカ仕込みの交渉力だ」 「全くです。でも助かりました」嶋田課長が話す。 褒めてるのか嫌味なのか解らんが、良い方に取っておこう。 「それじゃ、うちの香坂に、ポップ.手順書き.カット割とテロップは、今日が水曜日ですから、明日中にメ-ルさせます。私の方に、必要な在庫数をメ-ル下さい。どの位渡せるか確認します」 「宜しく頼む」 「それぞれ言語に訳し持ち寄り、月曜日に打合せしますか?」 「そうしますか。じゃあ、今日はこれで。これから、私は香坂と軽く打合せします。お先に失礼します」 「宜しく」「宜しく頼む」 2人に挨拶し、会議室を出てニヤリと笑う。 宣伝費用、少しはゴネるかと思ったが、案外すんなりいった。 経費はそれ程掛からず宣伝できるとは、ラッキーだ、ミキが頑張ったお陰だな。 今の事を、ミキに伝えたら喜ぶ顔が目に浮かぶ。 早く話してあげたい。

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