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第95話
会議室を出て部署に戻り、ミキを呼ぶ。
「香坂、ちょっといいか?打合せスペースで話がある後、‘手拭い洗顔’のポップ.洗顔手順.注意書きを印刷して、持ってきてくれ」
「はい、解りました」
打合せスペースで、さっきのアジア担当の課長と国内担当の課長との遣り取りを、掻い摘んで話す。
「ええぇ、なんか大変な事になってますね。予想外のところで火が付くなんて。でも、他の部署でも私がやった仕事が、上手くいくのは凄く嬉しいです。」
また、ふわりと笑う。
その笑顔で、こっちまで嬉しくなる。
ミキが持ってきた書類を見ながら指示を出す。
「それでだ、いくつかやって貰いたい事がある。1つは、ポップ.洗顔手順.注意書き英語を日本語に訳す事。2つめはモデル使って洗顔手順のDVD製作する。カット割とテロップを頼みたい。出来たら1度、俺に見せろOKが出たらアジア担当の杉山課長と国内担当の嶋田課長に、社内メール送る事になってる」
俺も気を引き締めて「いつまでに、送れば良いですか?」
「2人には、明日中にはメ-ルする事になってる。急がせて悪いが、出来るか?」
暫く考えて「はい、大丈夫だと思います。やる事はカット割と手順テロップを、上手く組み合わせればいいだけですから、今日中に、課長に1度見て貰います」
「それで頼む」
「はい、解りました。じゃあ、早速、取り掛かります」
席を立とうとすると小声で内緒話をするように顔を近づけ
「ミキの頑張りが、実を結んだな」
頭をぽんぽんされて、凄く嬉しかったが、会社だと思い抱き付きたいのを我慢して「ありがとうございます」と言うだけで納めた。
それから部署に戻ると佐藤さんが「何だって課長?」と興味津々で聞かれ、課長の話を簡単に説明する。
佐藤さんは「すげえな、香坂」
田口さんは「香坂が頑張ったからだ。今日、昼飯、俺と佐藤で奢ってやる」と言ってくれてた。
「ありがとうございます。解らない事は、相談しますので、宜しくお願いします。後、お昼ご馳走になります」
「ええぇ、俺まで奢るんですか?てか、香坂。そこは遠慮しろよ」
「いいえ、折角ですから奢って貰います。こういう機会でもないと、佐藤さんに奢って貰う事、無いですから」冗談半分で話す。
「確かに」と田口さんも乗るから、皆んなで笑った、本当に良い先輩だ。
それからは、ポップと手順.注意書きは英語から日本語には直ぐに訳せた。
カット割は田口さんに、一応、手書きで、こんな感じでとテロップを添えて相談し、何とか下書きが出来そうな所でお昼になった。
3人連れ立って部署を出る際に
「課長、一緒にお昼どうですか?」
田口さんが誘うが「ああ、もう昼か?悪いが切りの良い所までやるから、昼はずらす。皆んなで行ってきて良いぞ」
「解りました。じゃあ、行ってきます」
3人で会社を出て、結局近くの定食屋で昼飯にする。
それぞれ昼飯を食べながら話す。
「俺も今回は勉強になった。香坂みたいなアプローチの方法があると、今まで忙しいと言って新しい試みをしてなかったと感じた」
田口さんがしみじみ話す。
「俺もっす。でも少しだけ、課長に前、合コンの時、女の子にリサーチ位しろって言われて、それからは、女の子に流行ってる物とか色とか見たり聞いたりするようにしてます」
「へえ、佐藤にしては成長したな。で、今、流行ってるのは?」揶揄う田口さん。
「俺的には、最近、合コン来る子が籠のバックを結構持ってる気がするんです。夏用なのか向日葵とかハイビスカスの花やリボンの飾りが付いてるのが多い」
「あっ、それ私も思ってました。街の中、ブラブラした時に今年の流行りなのかなって。でも、佐藤さんが言ってたみたいに花とかリボンが付いてるのが多いから和テイストは無いのかな?って見てたんですけど、無いみたいで残念です」
俺と佐藤さんの話を聞いていた田口さんが
「…ん……。おい佐藤、香坂。それイケるんじゃ無いか?籠のバックで和テイストで、海外に売るってどうだ?」
「良いかもしれないっす」
「そうですねぇ。着物とか浴衣の端切れを使えば、和テイストのリボンやバックに編み込んでもいいかも。付いでに、シュシュとかも一緒に作るのはどうですか?付属にするとか可愛く無いですか?」
「香坂、良い所に目を付けたなぁ。端切れなら金もそんなに掛ら無いし…それならサンダルは?今、下駄を売ってるが需要は殆ど無い。前に日本でも少し流行った和柄サンダルで畳風のやつ、アレ海外の人喜びそうじゃねぇ?」
田口さんが話すのを聞いて、スマホで調べると和柄サンダルが結構あった。
「田口さん、コレですか?」
「そうそう、籠バック.シュシュ.和柄サンダル.揃えて使って貰うのも有りだな」
それから3人で、ああでも無いこうでも無いと話が弾み、アッと言う間に昼休みは終わろうとしていた。
「課長に話してみたらどうですか?佐藤さん」
伊織さんなら良くても悪くても話は聞いてくれるはず。
「何で俺が?」
少し嫌そうな顔をしている。
「佐藤、言い出しっぺは、お前だろう。俺もフォロ-するから言うだけ言ってみろよ」
「私も協力できる事はしますから」
「……言うだけ」
悩んで結局、俺と田口さんに押し切られた形になったが、俺は話をして凄く楽しかったし良い案だと思う。
奢って貰って有意義な話をして過ごした、昼休みだった。
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