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第96話
お昼休憩から戻ると伊織さんは居なかった。
「課長、昼飯行ったみたいだな」
ホッとした顔で佐藤さんが話す。
「お前。課長、戻ったら話せよ。こう言うのは勢いとタイミングなんだから」
田口さんが呆れ顔で諭す。
30分程で戻って来た伊織さんが
「香坂、手拭いの在庫調べてくれ。後、発注してあるのはどの位出来てるか確認して報告くれ」と指示し自席に着く。
「はい、解りました」
俺が返事をすると田口さんが、今だと佐藤さんに目で合図を送る。
佐藤さんは暫くどう言おうか考えていたみたいだけど意を決して課長の席に行く。
課長と2人で暫く話してると席に戻り「ああ緊張したぁ」と息を吐いて居た。
俺と田口さんは顔を見合わせて、気付かれないように笑った。
考え事をして居た伊織さんが
「明日、出掛ける奴は居るか?」
佐藤さんと俺は「内勤です」
田口さんは「午前中に業者の所に行き、戻りは昼過ぎですが」
「さっき、佐藤から言われた件、少し考えてみる価値ありそうだから、皆んなで会議してみようと思う。明日、3時に会議室で。それぞれ色々な案を考えて来てくれ」
「「「はい、解りました」」」3人で返事をする。
笑いながら「やる気あるなぁ。佐藤、竹細工の方に、どこまで出来るか聞いておけ、他の竹業者にも当たってみろ」
「はい」
佐藤さんの返事を聞いて、伊織さんは自席に戻り、仕事を再開したのを確認して
「考えてみる価値ありだってよ、やったな。佐藤、頑張れ」
「佐藤さん、何でも言って下さいね」
「商品化するかどうか、どこまで出来るか解んねぇけど、やるだけやってみるわ」
やる気無さそうにみせて、やる気が伝わってきた。
心の中で頑張れって応援した。
それからは通常業務と‘手拭い洗顔’の資料作りをし、伊織さんに2度目で何とかOKを貰えた。
その日の夜に♪♪♪♪画面を見ると伊織さんからで直ぐに出る。
「悪いなぁ。遅くなっちまった。今、大丈夫か?」
時計を見ると11時を回っていた。
「伊織さん、こんな時間まで仕事ですか?」
「9時まで会社にいて、それから家で少し持ち帰った仕事してた。気が付いたら、こんな時間経ってたんだが、声聞きたかったから電話した。遅くにすまん、寝るところだったか?」
「そろそろとは思ってました……でも、今日、LINE無かったから…」
待っていたのかと思うと嬉しい。
「ミキ、良く頑張ったな。明日、仕事終わったら、迎え行くからレストランで食事しよう。頑張ったご褒美だ」
「えっ、いいですよぉ。伊織さん、仕事忙しいのに」
「今日、佐藤と田口には奢って貰っただろう?俺にも何かさせてくれ。明日、そうだなぁ。少し遅くなるが8時に迎え行くから。そうだ、ジャケット着用だけ忘れるなよ」くっくっくっ
「もう、解ってますよぉ。でも、本当にあんまり無理しないでね」
「解ってる。じゃあ、明日。愛してるミキ」
「俺も……おやすみなさい」
照れちゃうよぉ。
明日、伊織さんと食事、嬉しいなあ。
朝1番乗りで、会社に着きパソコンを見ていた。
「あらぁ、香坂君、今日早いのね。おはよう」
上野さんに挨拶され
「おはようございます。私もさっき来たところです」
今日、伊織さんと食事行くのが、嬉しくって早く目が覚めたとは言えず挨拶をし、上野さんを見るといつもと違うバックを持っていた。
昨日から何となくバックに目がいくようになっていた
思わず「上野さん、いつもとバック違いますね」
「流石、香坂君ね。きちんと見てくれている。実はコレ友達の手作り商品なのよ。可愛いから譲って貰ったの」
「へえ、手作りには見えませんね。バック作るなんて凄いです」
「手先が器用で、家にいて暇だからって。ねえ、見て見て、ここがお気に入りなのよぉ」
可愛い女の子みたいだ。
いつまで経っても、女の人は可愛いものが好きらしいと考えていた。
「布地が2種類使いなのよ。底の方は皮で後は布地を使ってるのよ、中々、お洒落じゃ無い?」
「本当だ。パッと見は黒で統一されてるから解らなかったけど、良く見ると解るって感じが、お洒落ですね」
「やっだぁ。香坂君、解ってるわねぇ」
そこに田口さんが出社し挨拶して
「おはよう。なんか2人盛り上がってるね」
2人で話してた内容を話す。
「上野さんも女だねぇ」って上野さんの事、揶揄っていた。
それが、朝の出来事だったが、これがのちに功を奏する事に成るとは、俺も田口さんも思わなかった。
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