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第98話
ミキが田口を連れ出して10分程で、田口だけが戻って来た。
何だ?2人でと思ったが、顔には出さず、缶コ-ヒ-を手渡し
「香坂は?」
「課長、今、香坂は工場に問い合わせしてます。佐藤竹細工の方では、大まかな部分は出来るんだな?」
「…はい」
「課長、竹細工だけに拘らず、底の部分から3割程竹細工で、後の上7割程を布素材でいくのはどうでしょう。それなら、竹細工業者の負担が軽減されます。その事で、香坂が工場の方に出来るか聞いてます」
「……成る程な。その手があったか。良く思い付いたな」
「私じゃ無いですよ。香坂に今、相談されて褒めるなら香坂です」
「そうか。じゃあ、香坂が戻るまで、他の部分をやっておこう。休憩終わりだ。後、佐藤、いつまでも悩むな。こうやって皆んなで考えれば良い案も出てくる、いいな?」
「はい、ありがとうございます。田口さん」
佐藤らしくも無くシュンとしてる。
「お礼は香坂に言え。後、お前が元気無いと張り合いが無いからな。お前の取り柄は元気な所なんだから」
一応励ましているらしい。
「田口さん、何気に酷い事言いますね」
言い返せる位には、少し元気が出たようだ。
「ヨシ。じゃあ、商品は香坂が戻らないと話が進まない。小物シリーズのブランド名を考えよう。ロゴを付けてタグにするのつもりだ」
佐藤が遠慮がちに話しだした。
「テ-マが可愛いですよね。そのままロ-マ字でkawaiiはどうでしょう。女の子達、良く可愛いって口に出すし、海外も可愛いって浸透してますし…」
そのままズバッといくのも良いと思ったが、俺の意見を言う前に田口の意見を聞く事にした。
「田口はどう思う?」
「俺は佐藤にしては良い案だと思います。確かに佐藤の言う通り可愛いって日本語、浸透してますし誤魔化さないでそのままって言うのも解り易く良いと思います」
「俺もそう思う。じゃあ、ブランド名とロゴ.タグはロ-マ字でkawaiiにする。他、何か無いか?何でもいいぞ」
「課長、kawaiiのiの上の部分の点を思い切ってハ-トにしたらどうでしょう?その方が、他と差別化、出来るんじゃ無いでしょうか?」
まさか、田口の口からハ-トと言う言葉が出ると思うわず、俺は心の中で驚いていると佐藤も思ったらしく。
「えっ、田口さんの口からハ-トなんて言葉出ると思わなかった。案外、乙女なんですね」
泣いたカラスのなんとやらで、いつもの佐藤に戻っていた。
「バカ、誰が乙女だよ。彼女がLINEに良くハ-トマ-ク付けてくるから、何となく女は好きなんじゃねぇかと思っただけだ」
揶揄われて憤慨し話す田口に、また
「彼女はハ-トマ-クで、田口さんはキスマ-クですか?」
ニヤニヤして揶揄うのを聞いて、俺はドキッとした。散々、ミキの体にキスマ-クを付けていたからだ。
今、ここにミキが居なくって良かったと心の中で話す。
矛先が俺に向けられた。
「課長の彼女もやはり可愛い物好きなんですか?」
佐藤の奴と思いながら
「そうだな。本人は綺麗なのに、可愛い物が好きだな」
もちろんミキを思い描いて話す。
今、ここに居たら真っ赤になってただろうな。
「「ご馳走様です」」
「もう、雑談は終わりだ。田口、そのハ-トのロゴ採用するが両方のiに付けるより、最後のiだけに少し大きめに付けるのは、どうだ?」
紙とペンで何種類かのkawaiiを書き
「そうですね。その方がすっきりして見映えがいいですね」
「ヨシ、決まりだ」
活気づいてきた会議室に、ミキが戻ってきた。
「香坂、どうだった?」
田口が口を開くと
「工場長の話では出来るそうです。工場には沢山の端切れがあるから、それを使って編み込んで袋状にすれば良いと言ってました。何でも、着物のポリエステル素材だとある程度、雨にも強いらしいから、それを使ってはどうか?と、ただし、大雨の時は防水スプレーを使った方がいいって言ってました。今、ポリエステルの着物の方が需要あるらしく、端切れの色も豊富にあるみたいですが、竹細工と布の境目は隙間が出来るかも知れないから、そこは考えて欲しいって言ってました」
「そうか、良かったな」
田口も心配だったらしい。
「ありがとう。香坂、助かった」
さっきとは別人のように話す佐藤。
「いや、お礼は上野さんにして下さい」と言って田口と目配せをしていた。
俺と佐藤は「???」だったが、取り敢えずプロジェクトは進行出来そうだと一安心した。
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