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第100話
「絵里香さん?……お久しぶりです」
「本当ねぇ、相変わらず綺麗な顔ね」と言ってミキの頬を手の指で撫でる。
凄く意味深な感じの雰囲気を醸し出し、それを見て顔に出さずムッとする。
「絵里香さんは、いつ見ても綺麗です」
頬を撫でられても放っておくミキに「誰?」と聞く。
「……大学の先輩です。平井絵里香さんです」
「絵里香さん、俺の上司の成宮さんです」
挨拶しようと思ったが、彼女の方が俺を一瞥(いちべつ)し「そう」それだけ応えただけだった。
ミキしか見てないようだ。
「美樹君……永瀬は元気?」
「……いいえ、連絡取ってないんで解りません」
「……そう」
にっこり微笑み俺の前で、俺に聞こえるようにミキの耳元で囁く。
「また、1人寝が寂しかったらいつでも言ってね。美樹君は私のお気に入りだから」
また、頬をひと撫でし
「本当に綺麗な顔。やはり、美樹君が1番ね」
自分に自信がある顔でにっこり微笑む。
ミキもにっこり微笑み
「絵里香さん、ありがとう。もう、俺は大丈夫だから。ほら、連れの方が待ってますよ」
「あら、残念だわ。でも、必要ならいつでも言ってね。じゃあ、またね」
待っていた年下の彼の腕を組みレストランを出て行った。
彼氏持ちかと少しは胸を撫で下ろす。
「ミキ、あとでゆっくり聞くからな」
レストランでする話じゃ無いと思い部屋で聞く事にし、それからは何と無く気まずい雰囲気でレストランを出た。
折角のミキとの食事があの女の所為で台無しになった
俺の部屋でコ-ヒ-を入れて来たミキをいつもの体勢で抱きしめた。
「ミキ、こんな事聞きたく無いが、気になるからやはり聞く。あのレストランの女と……寝たのか?」
前に1人寝が出来なかった理由も聞いているし、女と寝てたのも知ってるが、実際に寝た相手を目の前で見るとヤキモチと実感が湧く。
「あの……そうです。大学の1.2年の時に何回か……でも、絵里香さんは年下の子を連れて歩くのが好きなんですよ。最初はまあ、そんな感じの事も有りました。でも、その内ただ寂しい時に側で寝てくれるだけが多くなったんです。絵里香さんは俺を見てるだけでいいって、後は連れて歩くのが嬉しいと言って。でも、絵里香さんが大学卒業してからは1度も会って無いです。今日、本当に偶然だった」
ミキの話を聞いて、ただ寂しいからセックス込みで寝るとは違う精神的なものを感じ、更にムカつきが強くなりヤキモチも強くなる。
「そうか。ミキが辛い時、俺が側に居て支えて遣りたかった。今更、言っても仕方ない事だが」
本心からそう思う。
「伊織さん……俺は今、思うとあの時は自分1人だけが辛くって寂しく悲観的になってました。周りを見ないで自分の事だけ考えて、自分勝手に寂しいからって女の子と付き合ったり、絵里香さんみたいに寂しかったら居てあげるという言葉に甘えていた。最低な事をしてました」
「まあ、そうだな。でも、その時は仕方無かったんだ。そうする事で無意識に精神的安定を求めていたんだろう。これからは俺がいる。寂しい思いはさせない」
「……伊織さん」
抱きしめていた手を解かれ、俺の方に向き直り両足を広げ腰に巻きつき涙を溜めて
「ありがとう。俺、伊織さんと出会ってから寂しく無い」
「ミキ…本当に泣き虫だな。大丈夫、俺は離れないから…ずっと一緒にいよう」
涙を吸い取り話す。
「うん、伊織さん…大好き」
首に回された腕でギュッと抱き付く、自然と甘えてくるようになったミキに愛しさが溢れる。
さっき感じたヤキモチも消えていく。
「俺も愛してる、未来永劫ミキだけだ」
誓いのキスをした。
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