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第110話
「おう、おやじ。また来てやったぞ」
「大将、また美味しい料理食べに来ました」
ミキと一緒に夕飯を食べに‘芳乃’に来た。
「ヨシ君、良く来たな。何食べたい?」
おやじの奴、すっかりミキにデレデレだ、可愛くって仕方無いって感じだ。
「おい、おやじ。俺にも聞けよってか、適当に出してくれ。俺は車だからミキは1杯だけな」
「解った、解った。ヨシ君、良い魚入ったから刺身と煮魚.唐揚げ.白和え.今日は豚汁とひじきご飯で良いかな?」
「うわぁ、美味しそう。大将の作るものは全部間違い無いですから、お任せで」
「おい、おやじ。だから俺も居るんだって、俺にも聞けよ」
「お前は何言っても、適当でとしか言わないから張合いが無いんだ」
「伊織さん、さっき適当にって言ってましたよ」ふふふ
場を和ますように、笑いながら話す。
俺もおやじもミキのほんわかとした雰囲気に癒され、顔を見合わせて笑った。
おやじの出した料理を「美味しい」「美味しい」と食べるミキにおやじは嬉しそうに、目尻を下げていた。
粗方、食べて話し帰る間際に
「伊織さん、今度マコと一緒に来ても良いですか?マコにも大将の美味しい料理食べさせてあげたいから」
前に俺の隠れ家でミキしか連れて来て無いと言ったのを覚えていたのか?俺に許可を取るミキに
「真琴君と来るのは良いが、絶対呑み過ぎるなよ。出来れば帰り連絡しろ」
「はい。マコ喜ぶと思う」
それから、おやじにミキの友達を今度連れて来ると話すと、また目尻を下げて喜んでいた。
ミキの素直な性格とほんわかとした雰囲気に、皆んな癒される。
「じゃ、おやじ。またな」
「今度は友達と来ますね」
「ヨシ君、待ってるからいつ来ても構わないよ」
2人の会話に
「おやじ、俺も居るんだってば」
最後まで言って3人で笑って店を出た。
車に乗り走らせながら車内で
「おやじ。ミキの事、可愛くって仕方ないって感じだな。長い付き合いの俺より気に入ってるし」
「そんな事無いですよ。大将、伊織さんと話す時、気を遣わずに楽しそうに話してるし、息子みたいに思ってるんじゃ無いのかな?」
ミキの言葉が嬉しい。
俺もおやじの事は父親のように思っているからだ。
照れ臭くなって
「おい、ミキは孫で俺は息子かよ」
「ヤンチャな息子って感じ」ふふふ。
「おい、おい。あのおやじ見たら、良くできた息子だろうが」はははは
マンション着くまで、そんな話をして笑ってた。
ソファを背にラグに腰掛け、足を伸ばして座りミキがコ-ヒ-を入れて戻って来るのを待っていた。
「伊織さん、コ-ヒ-ですよ」
言って、俺の足の間に背を向けて座る。
もう何も言わずとも、この体勢に自然となるようになった。
「お、ありがと」
コ-ヒ-を2人で飲みながら、明日からの夏休みの話をする。
「ミキ、明日は墓参りに行こう。少しゆっくりしてから出よう」
「はい。伊織さん、ありがとう」
「バカだな。ミキの家族は俺の家族でもあるんだ、遠慮はするな」
後頭部にキスする。
「明後日には石垣島に3泊4日だ、楽しみだな。
海も空も綺麗だろうし、少し観光もしような」
「はい、海も散歩したいですし、海の幸も楽しみです」
「そうだな。散歩しながらビ-チグラス見つけるのも良いな、今度は俺も見つけるから、どっちが良いの見つけるか競争しよう」
「うわぁ、楽しそう。負けませんから」
「俺も負けないからな……よし、負けたほうが旅行中に1つだけ相手の言う事、何でも聞くって事にしよう。その方がより楽しめる」
「……伊織さん、変な事は言わないですよね?」
裸エプロンとロ-タ-の件で疑った目で見るから
「変な事って?それよりミキ、もう負ける前提なのか?」
惚けて話を進める。
「……解りました。負けません、俺の方がビ-チグラスには詳しいですから」ふふふと余裕の笑いをする。
「ミキ、余裕だな」
あんな物は偶然の産物だ、詳しくっても意味無いのに可愛い奴。
「伊織さんに、何聞いて貰おうかな?」
もう勝った気で楽しそうにしている。
容姿は綺麗でモデルも霞む位なのに、性格はほんと素直で可愛いし尽くして癒してくれる。
今までの奴らが自分には勿体無いって言ってた事が解るが、俺はミキ無しの生活はもうできない。
全てに於いてミキ優先だ。
ミキにはそう悟らせないように、重く感じ無いようにしてるが……。
ミキが楽しそうに話す姿を見て、出会えた事.一緒に居られる幸せを噛み締めていた。
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