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第123話
ダイビングショップで着替え店を出て直ぐに
「ミキ。忘れ物したから、ここで待っててくれ」
ミキを店の前で待たせ戻り、カウンタ-に居たアルバイトの青年に話し掛ける。
「あっ、君。昨日はうちの奥さんに星空が綺麗だと教えてくれてありがとう。お陰で夜、散歩しながら星空を見る事が出来た。うちの奥さんも親切な人って褒めていたよ。うちの奥さんが名刺貰ったみたいだが、明日帰るんで必要無くなったから返して置く。うちの奥さんはこういう事に疎いって言うか天然なんでね」
持っていた名刺をカウンタ-に置きニヤリと嫌な笑い方をして胸がスッとし、出口に歩き出す。
背後から「チッ、旦那持ちかよ」と聞こえたが無視しミキの元に戻り何事も無い顔で話す。
「さて、昨日とは別のスポットでシュノ-ケルするか?また、違う海の中が見れるかもしれない」
「そうですね、楽しみぃ」
何も知らないミキが屈託の無い笑顔で返す。
俺達は海の中で手を繋ぎ魚や貝、珊瑚を見て人が居ない所でキスしたりと充分シュノ-ケルを楽しんだ。
「もう充分楽しんだか?ミキもだいぶ上手く泳げる様になったな。そろそろ時間だが」
「はい、もう終わりかと思うと寂しいですが、また伊織さん、シュノ-ケルしに来ましょね」
海から出て、あのダイビングショップに向かうとアルバイトの青年は隣のカフェでお客さんと話しをしていた。
軟派だろうと思うが店に居ない方が、こっちは都合が良い。
着替えて店長にお礼を言い店を出た。
「ミキ、明日帰るし海の中ばかりだったから砂浜を散歩するか?例のビ-チグラスを探しながら。そう言えばどっちがより良いビ-チグラス見つけるか競争しょうって話してたな」
砂浜の方に歩きながら話す。
「そう言えば、言ってましたね。競争するなら負けません、俺の方が良く知ってますからね」
「勝敗はどうやって決める?数多く見つけた方か?それとも量より質か?」
「そうですね。質にしましょう、レアなのは赤.オレンジ、黄色、ピンクで、2番は紫とか黒で、3番は青、良く採れるのが白.水色.緑.茶ですね」
「じゃあ、レアに近い方が勝ちで、時間は1時間にするか?」
ふふふ「負けません。今からスタート!」
急いで探し出すミキが子供みたいで可愛いと思い、俺も負けてられないと探し出した。
「あったぁ、でも水色」
最初に見つけたのはミキだった。
俺も探してはいるが中々見つからない、探し始めて30分経とうとしていた。
ミキは水色.白.緑と何個か見つけたようだが俺はまだ1つも見つけて無かった、焦り出したその時
「やっと、見つけた」
水色だった、がっかりしてポイっと捨てると
「だめ、伊織さん。どんな色でも使い途あるから捨てないで」
俺が捨てたビ-チグラスを拾って注意される。
「悪かった、ミキが使うんだったな」
それからは見つけても捨てずに取って置くが、レア物は中々見つからない。
「やったぁ、紫、見っけ。レア物。もう俺の勝ちですね。時間も後、15分ですし」
ふふふと蔓延の笑みを浮かべ勝ち誇っている。
絶対負けたく無い俺は必死に探すが、中々見つからずもう残り時間も無くなり、半分諦め始めた時、キラっと光る物を見つけ手に取る。
「ミキ、俺の勝ちだな」
俺の手の中にある物はレア中のレアの赤のビ-チグラスだった。
それを見て「うわぁ、良く見つけましたね。俺もこの前の時初めて見つけたんですけど、中々見つからなんですよ。凄い、凄い」
褒めるミキに
「勝負は俺の勝ちだな。丁度、時間切れだし」
「そうですね。赤を見付けられたら仕方ないです。俺の負けで」
「そうかそうか、負けを認めたか」
「………」
少し悔しそうにしてる。
「この広い砂浜で、ミキの色の赤を見つけられるのはやはり何万人といる中で、ミキを見つけた俺の強運や俺の所に来る運命だったんだな。ミキもこのビ-チグラスも」
「伊織さん…そう言ってくれて嬉しい。大好きです」
「俺は愛してる」
広い海と登る夕日の中で自然と唇を交わした。
それから2人で手を繋ぎ浜辺を歩き、少し休もうと浜辺に腰を下ろし、俺の足の間にミキを座らせ背後から抱きしめ、いつもの体勢で沈んでいく夕日を眺め、この世界に2人だけしかいないような錯覚が起きる。
静かな中に波の音しか聞こえないロマンチックな雰囲気だった。
時折、ミキの耳元や首筋に唇を落とすとくすぐったそうに首を竦め、その仕草も可愛い。
こうして暫く2人の世界を楽しんだ。
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