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雅史の家で

仕事が終わり、雅史に見つからないよう 裏口から帰ろうとした瞬間 「何逃げようとしてるんだ、翼」 「・・雅史先生」 呆気なく捕まってしまった。 強く腕を掴まれ車に乗せられると 見知らぬマンションに連れて行かれた。 「ここが今からお前が住む家だ」 信じられないほど広いマンション だった。必要最低限の物しかない この家はあまりにも生活感が なく、本当に住んでいるのか 疑ってしまうほどだった。 「急に言われても困ります。 それに荷物を運ぶのだって 大変なのに」 「それは大丈夫だ。お前の家から 既に持ってきている」 案内された部屋に行くと本当に 全部の荷物が収まっていた。 「もう逃げられないぞ」 耳元で囁かれたその言葉は 翼を動けなくする毒の ようなものだった。

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