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日が暮れて、霧咲が屋敷に帰ってきた。夕食の前に着替えと湯浴みをしたいから手伝って、と堂々と榛名を呼び付けて部屋へと招いた。霧咲は今まで自分の身の回りの世話は誰にもさせていなかったのだが、榛名を拾ってからは榛名にその役目をさせている。(ちなみに仕事関係の秘書はまた別に存在する)
部屋に入った途端、霧咲は後ろから榛名をぎゅっと抱きしめた。
「ただいま」
「お、おかえりなさいませ……」
(後ろから抱きしめられるの好き……っていうか、旦那様が好き)
榛名は昼間有坂に言われたことも忘れるくらい浸ろうとしたのだが――途端、霧咲の身体からむわっと香水の匂いがして、はっと我に返った。霧咲のものではなくて、女物のとても匂いがきついものだ。
(なんで、こんなにはっきりと匂いが移ってるの?まさか旦那様、視察に行ったふりをして例の婚約者と会って来たの……!?)
そんなものは存在しないのだが、いつもより霧咲の帰りが遅かったこともあり、榛名はそうに違いないと思い込んだ。(榛名は少々思い込みが激しい性格だ)
「今日はいつもより沢山の人間と会ってね……愛想を振り撒いてひどく疲れたよ。そんなに話すこともないのに、用が済んでもなかなか帰してもらえないし。榛名、一緒に湯浴みをして俺を癒してくれないかい?」
(帰して貰えなかったって……もしかして、そういうことをしていたから?)
「もちろん、お手伝い致しますよ」
(香水のにおいが、体に移るようなことを……)
「洗うのは、君の体でね。もちろん手は使わずにだよ」
「えっ!?」
「さ、服を脱がせてあげよう」
霧咲はニコニコしながら榛名の服に手を付けた。榛名はいつもなら『疲れてらっしゃるのに何をなさる気ですか!』くらい言うのだが、今は香水の匂いが気になって何も言えない。
主人の手で後ろから一つずつ丁寧にシャツの釦が外されていくのを、黙って眺めていた。
「……今日は随分とおとなしいね。もしかして、君もさみしいと思ってくれてたの?だから一緒においでって言ったのに」
「あっ……」
霧咲はするりと榛名のシャツの中に手を滑り込ませると、両の胸の飾りに人差し指と親指を添えて、ぎゅっと強めにつまんだ。飾りはすぐにぷっくりと起ち上り、そのままぐにぐにと何度も刺激を与えた。時に引っ張ったり、押しつぶしたり、全体を揉みこんだり。
榛名のソレは三か月前は普通の男の乳首だったのに、今は完全に霧咲の情欲をそそるための熟れた果実に変わっていた。前に回って舐めしゃぶりたいが、まだ少し我慢する。
「ンッ、ァアッ……べ、別に、そういうことではなくて……」
(俺が一緒に行ったら困るのは貴方でしょう?きっと朝も、俺が断るのを見越して誘ったんだ……)
「じゃあどうして何も言わないの?君らしくないじゃないか」
霧咲のいやらしい手つきにだんだんと息が上がり足がガクガクしてきて、榛名はつい後ろの霧咲の方へ凭れかかってしまったが、霧咲はそんな榛名を難なく抱きとめる。なおかつ、手の動きは一向にやめない。頑固で、時に強情な榛名を素直にさせる方法を知っているからだ。
「はぁッ、あんっ……わ、私も、早くそういうことをしたいだけです…っ」
「えっほんとう?昨日あれだけしたのにまだ足りなかったのかな。少しは加減しろなんて言ってたのにね……」
果たしてそれは本心だろうか?と霧咲は考える。なんとなく、今日は帰った時から榛名の元気がないというか――様子がおかしいのを感じ取っていたからだ。けど、もうこの行為を途中でやめられないくらいには、榛名の色っぽい声に呑み込まれかかっている。
「んぁっ、ん、ん……加減なんて、しなくていいですからっ……!」
(……俺の方が……)
「え?」
(俺の方が絶対、この人を満足させることができる……この匂いを付けた女なんかより……!)
榛名は後ろから首を傾けて霧咲を見上げて、情欲にまみれた顔を惜しげもなく見せつけた。赤く染まった頬と潤んだ目をして、赤い舌をちろちろと覗かせながら霧咲を誘う。
「だからはやく抱いてください……またいっぱい身体にキスマーク付けてっ……アッ!あん、あぁっ……!」
榛名のその仕草に、もう我慢できないとばかりに襲いかかってきた霧咲に思い切り官能の声を聞かせながら、榛名はこれ以上余計なことを考えるのをやめた。
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