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第249話

一方、瞬助は、陸上競技場のトラックスタートゲートに入る前にコウジの居場所は確認済み。 予選を無事突破して、110メートルハードル決勝に出場する選手はスタート位置に並び始める。 瞬助は1番外側の第8レーンに入る。 そこからコウジを探す瞬助。 居た! 手を振ると、気づいたコウジも小さく手を振り返してくれた。 反応してくれたことが嬉しくて、満足感に浸ろうとした瞬間、コウジの隣にいる男がコウジに親しげに話しかけているのが見えた。 (誰だよ、アイツ!) コウジも笑顔で話している。 よく見るとどこかで見覚えのある顔… (アイツは…) 競技のスタートが近づいて、スタンバイを促される瞬助だが、2人の様子が気になって、それどころではなくなる。 (コウジも、俺が走るのに何で見てねーんだよ) イライラが溜まるが、容赦なくスタートが近づいてくる。 仕方なく合図に従う瞬助。 『On your marks (位置について』 『Set(用意』 『パン!!』 容赦なくピストルの合図が響き、大声援の中、全員がクラウチングスタートする。 一斉に駆け出した選手達。 競技に集中したかったがやはりコウジが気になって、走りながらつい横目で見てしまう。 ッ、ヤベっ! 集中力を欠いたせいで、ハードルの踏切が手前になってしまった。 最初のハードルはなんとか飛び越えたが、次のハードルまでの距離が足りない… くッ駄目だ転倒するッ! 勢いがついた身体は止められない、そのままハードルに足が引っかかって、斜め前にハードルごと派手に転倒してしまう。 ガシャン!! 大きな音がたち、観客が騒めく。 女の子達からは悲鳴が… 「危な、瞬助ッ!?」 コウジは目の前で転倒する瞬助を見て愕然としてしまう。

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