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第252話
「うん、ハードルじゃなく普通に走る競技にすれば良かったのに」
「んー、100メートルとかやっぱ層が厚いし、俺じゃ生き残れないからな、ハードルならいいとこ狙えたんだけど、もう今年は陸上インハイ終わったな」
予選決勝で転倒したから次には進めない。
「そっか…」
「しばらくリハビリだろうし、はーぁつまんねー」
ため息をつく瞬助。
「うん、でも来年頑張ればいいよ、ちゃんと頑張ってて、意外と速いことが分かったから、今度はちゃんと応援するし」
「え?練習観に来てくれるってことか?」
「うん」
「やった!じゃ来年インハイ目指して頑張ろかなー」
そうキラキラな笑顔を向けて喜んでいる。
「怪我には気をつけてね」
「あ、ならお前も、見学中に他のやつと話すのは止めろよな」
「えっ」
「特に大会本番スタート前とか、」
「え、もしかしてさっき糸崎さんと話してるとこ見てたの?」
確かに話しかけられて少し話していたけれど…
「あぁ!それ!糸崎だ、見たことあるけど思い出せなかったんだよ、気になって集中できなかったから」
「まさかそのせいで転んだの!?」
「え、あー、まあ少しはな」
そのせいで転んだと言ってしまうと何だか情けない奴になりそうで微妙にはぐらかす。
「でも、話しかけられたら仕方ないよね」
「いや、俺が走るからって言って話はやめれる筈だろ?」
「瞬が転ぶからって?」
「いや、それは…」
「うーん、そうだね、瞬が頑張ろうとしてる時に、よそ見されたら気分よくないよね、今回は僕が悪かったよ、ごめんね、今度からは気をつけるから」
「えっ、なんか優しい!可愛い!」
コウジの言葉にきゅんとしてしまう。
「さすがの僕も、満身創痍な瞬にこれ以上冷たい言葉は言えないし」
「じゃ、もっと甘えようかなー」
そう頬を寄せてくる。
「ばか、」
「ばかじゃねぇけど、うし、タクシー呼ぶか」
とりあえずロッカールームについて、病院に行くため、椅子に座ってタクシーを呼ぶ瞬助。
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