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第253話
その間に、コウジは、まだ血が出ている足の怪我を簡単に手当てする。
「さんきゅ」
電話を終えて、屈んでいるコウジのこめかみにキスを落とす。
「うん、まあそんなに深い傷はないみたいだから良かった」
「だな、タクシー15分で来るから門で待つか」
「うん、歩ける?」
「おう、お前がそばにいたら平気」
耳に口付け、まっすぐ見つめイケメンスマイルで囁く。
「意味不明」
そんな瞬助にドキッとしつつ呆れたふりをして立ち上がる。
荷物を肩にかけて、瞬助を支えながら表へ出ると…
糸崎が声をかけてきた。
「あ、幸田くん大丈夫?」
「あ、糸崎さん」
一緒に観戦していたのに挨拶もせずに帰ってしまっていた。
「……」
コウジと2人きりを邪魔されていささか機嫌が悪くなる瞬助だが…一応頷いている。
「車出せるから病院まで送ろうか?」
「いや、タクシー呼んだんでいいっす」
瞬助は素早く答える。
「糸崎さん、さっきはすみません、急に」
「いや、いいよ。それだけ心配だったんだよね、本当に君はお医者さんとして大切なものを持ってるね」
「いえ、」
「コウジ、タクシー来るから」
瞬助はコウジの言葉を遮るように促す。
「あ、えっとお気遣いありがとうございました、急ぐので」
瞬助を支えながら、笑顔で会釈していく。
「うん、またね」
糸崎も頷いて手を振ってくる。
「はい、」
「いくぞ」
無表情ですでに行こうと歩き出す瞬助。
コウジも歩き出しながら糸崎に手を振り、少し離れてからため息をつく。
「瞬、糸崎さんにもうちょっと愛想よくできないの?」
「知るかよ」
「心配してくれたのに」
「コウジのことヤラシイ目で見てるやつに、なんで愛想しなきゃならないんだよ」
「な、べつに糸崎さんヤラシイ目でなんか見てないでしょ、普通に話してただけだし」
「見てたし」
拗ねたように顔を背けながら張り合ってくる。
「はぁ、駄目だコイツ」
かなり偏見のある瞬助に呆れてしまうが…
「とにかく、アイツがコウジに近づくだけで嫌なんだよ、もう近づくなよ」
「んなこと、無理に決まってるでしょ、もう」
また勝手なことを言い出す瞬助にイラっとするが…
「なんで無理なんだよ」
「じゃ、瞬も女の子たちに近づくなって言ったらできるの?」
「向こうから来るんだから無理だろ」
「じゃ僕も無理だよ、ていうか瞬は女の子たちにはめいいっぱい愛想してるのに、自分のことは棚に上げて…」
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