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第255話
病院からタクシーで寮の前まで帰ってくる2人。
支払いを済ませて、瞬助の荷物を持って付き添いながら寮に入っていくコウジ。
2人の部屋は202号室。二階だ。
この寮には階段しかないので、階段を登らないと部屋にはたどり着けない。
「いつもなら軽いのに、面倒だな」
瞬助はボヤきながら松葉杖をコウジに預けて、階段の手すりを持って、怪我した足をかばい1段ずつ片脚で登っていく。
「危ないから、集中して」
コウジは瞬助の荷物をいったん階段の下に置いて、瞬助がバランスを崩さないように後ろから支えていく。
そうして、なんとか登りきって息をつく。
「ちょっと荷物取ってくるから、瞬は先部屋帰ってて」
「了解!」
先に戻る瞬助を見送って、荷物を取りに行くため階段を降りる。
荷物を持って上がろうとした時…
「楠木くん!!」
寮の入り口の外から声がかかる。
「え?」
「楠木くん!ちょっと聞きたいことがあるの、来てくれる?」
「あ、…うん」
瞬助のファンの子だ…
怪我の様子が気になるのかな?そう思って、様子を伝えようと、その子のところへ歩いていく。
入り口を出て、脇にいる女子高生の元へ…
「幸田なら大丈夫だよ」
そう声をかけるが…
しかし、コウジを待ちうけていたのは…
バシャ!!
女子高生は、コウジにイキナリ水を浴びせかけた。
「ッ!」
「あんた、幸田くんの近くにいすぎ!」
そうして憎しみのこもった目で睨みながら放つ言葉。
「っ、それは、仕方ないよ、寮も同じだし、僕ら友達なんだから」
「友達以上でしょ!陸上競技場で幸田くんとキスしてたのはなんで!?」
「…あれは、幸田がふざけてやっただけで、そんなにたいしたことじゃ」
アレを見られてたのか…
とりあえず言い訳をしながら思う。
「女の子みたいな顔して!言い逃れできると思ってんの?ふざけないでッ!」
女子高生はかなりイラついた様子で怒鳴ってくる。
「っ、」
コンプレックスに刺さるその言葉には頭にきたけど、言い返さずに我慢する。
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