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第259話
それを見届けて、汚れた服をも一緒に洗おうと服のまま浴室内に入り、上に着ている服を脱ぐ。
「墨汁って湯で落ちるのかな…」
風呂場の椅子に座りながらボヤいていると、人の気配。
「コウジ?」
外から声がかかる。
「瞬?部屋で待っててよ」
「いや、ここにいる」
どうやら部屋から椅子を持って来て、脱衣所に居座る様子。
「えぇ?もう、じゃ、携帯電話持ってる?墨汁の落とし方検索してみて」
「オッケー、待ってろよ」
仕事をもらえて嬉しそうに頷き探し始める。
しばらくして…
「コウジ?」
「うん」
「墨汁は早めに流した方がいいらしい」
浴室の扉越して会話する。
「分かった」
「あ、でもゴシゴシ擦るなって書いてる、押し洗い?しろって、」
「うん、やってみる」
「手伝おうか?洗うだけならこっちの洗面所でもできるし」
「いいって」
そう断っていると、瞬助が松葉杖をついて浴室のドアを開けてくる。
「髪取れなくなったら困るだろ、先洗っとけ、ネット見ながら服はやるから、かせって」
言い出したら聞かない…
「…、ありがと、じゃ」
仕方なく立ち上がって墨で汚れた服を渡しにいく。
上半身は何も身につけていないコウジだが、左側の茶色い髪と頬が墨で汚れている。
「…マジごめん、迷惑かけた」
そっと屈んで近づき、真剣な眼差しでもう一度謝る。
そのまま、柔らかい唇が重なる。
「もういいから、…墨つくよ?」
そんな瞬助にドキリとなりながら、ゆっくり離れる。
「コウジ」
「僕も、今日は目立ったことをしてしまったから悪かったし」
「悪くねぇよ、俺の事、心配してくれたんだからな」
「…うん」
でも、あの場に行くべきじゃなかった。
瞬助のファンで、僕のこと知らない人は誰?ってなった筈だから…
「とりあえず髪洗って」
「うん、左腕大丈夫?」
左腕もかなりの範囲怪我をしている瞬助。治療済みとはいえ怪我してから数時間しか経っていないから、少し腕を動かしても痛いはずだけど…
「平気平気!」
そう爽やかスマイルで強がりながら、扉を閉めて洗面台に向かう。
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