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第13話
――コハク寮。
202号室。
ついに帰って来てしまった。
「よし」
意を決して部屋の戸を開け、中へ入る。
パタン。
軽く音をたてて閉まる戸。
その音を自分の部屋で聞いた幸田…ハッと反応する。
(……帰ってきた!?くすのきが?)
そう思って寝込んでいた幸田は起き上がる。
……コンコン。
しばらくして幸田の部屋の戸がノックされる。
そして声。
「幸田?ちょっといい?」
幸田はベッドに座ったまま、慌てて返事をする。
「あ、あぁ」
戸をあけて静かに部屋に入る僕。
「カゼだって?大丈夫?医者志望が簡単にカゼひくなんて情けないよ」
柔らかい口調で語りかける。
「…く、くすのき…」
驚いている様子の幸田に近くの椅子に座りながら話を続ける。
「あのね…やっぱり幸田に言っておきたくて、先の事考えると気まずいままじゃ幸田も嫌だと思うし…」
幸田にまっすぐ言う僕。
久々にたくさん話かける僕を見て、なにを言われるんだというような顔の幸田。
「僕は、幸田のこと嫌いじゃないよ…勉強もスポーツもがんばってて、尊敬してる」
薄く笑いながら伝える。
少し間があって褒められた事に気付く幸田。
「くすのき…」
嬉しそうに、僕の名を呼ぶ。
「でも、でもね…それは友達としてであって…ホントびっくりした、キスされた時…」
静かに誤解を解きながら言う。
ふっと幸田の表情が曇るが、気にしないように話を続ける。
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