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第14話
「でもね…同性からキスされるのは、初めてじゃないんだ…これが」
僕が笑いながら言うと幸田は、がーんとショックを受けた様子で驚いて…
「なっ!だ、誰にッ!」
真剣に問ってくる。
「そんな…マジメに…兄キが、うちの兄キが時々ふざけてね」
少し気はずかしくなって視線をナナメ上にそらす僕。
やっぱり変だよね、ウチの兄キ。
幸田は呆れた様子で聞いてくる…。
「どういう…兄貴だよ」
「そう、幸田はどうして僕にあんな事したの?」
キスのこと、どういう意味があるのか確かめるため僕は聞いてみた。
「ど、どうしてって、分からない。くすのきの顔見てたら…触りたくなって、キスしたくなって」
とりあえず真剣に考えて答えてくれてる様子。
「はは、やっぱり、僕ってからかわれやすい顔してるのかな…兄キにも言われたけど」
やっぱりからかわれたのかと言葉を出す僕に、慌てたように言い返す。
「違う、からかってなんかいない…俺はマジで…」
最後の言葉は幸田自身、まだ迷っているような口調。
僕はすかさず問ってみる。
「…幸田は、僕が好き?男が好きなの?」
「……、そんなコトはない」
詰まりながらも素直な答え。
「そんなコトって?」
「別に、男を好きになった事なんてない…女と付き合ってたし」
困った風に答える。
僕は幸田の言っていることに矛盾を感じて聞いてしまう。
「じゃぁ、どうして?」
「…入学して、くすのき見た時、驚いた…悪いけど、こんなカワイイのに制服見たら男子で、その時は驚いただけだった。でも毎日顔合わせて一緒にいるのが当たりまえになっていくうちに、なんか…その瞳に吸い寄せられたって言うか…」
「何?それは…」
理解に苦しむ言葉にまた問ってしまう。
幸田は僕の横髪に触れ瞳を見て…
「ほら…今もしてる、何かを探し求めるギモンの瞳。あの時もその瞳してたんだ、ぼーっと窓の外眺めてた…声かける言葉が見つからなくて…気持ちにおされてあんなこと」
幸田は静かに心境を教えてくれた。
「そっか…僕にもオチドがあったんだね、ガードが緩んじゃったんだ。ちょっと色々、考えごとあったから…」
そう僕が言うと幸田は…。
「あ、違う、それはッ!ごほっけほっ!」
急に咳込む。
「大丈夫?」
咳込む幸田を心配して背をさすろうと近づくと…
「っうわ!」
急に幸田に抱きしめられる。
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