15 / 275
第15話
「やっぱダメだ、こんなに近づかれると、抱きしめたくなる」
僕を抱きしめたまま、そう囁く。
「うーん…そんなに無防備かな?僕…」
少し不本意に呟くと…。
「あったかい…」
なんとも嬉しそうな声の幸田。
「むー、仕方ない、コレくらいなら」
払いのけたいのを我慢する…。
僕は、ふっとあることを思い出して…
「あ、そうだ、大事なことを忘れてた。…この前は、おもいきりお腹蹴っちゃってごめんね…いきなりだったし、アト残ってない?」
謝る僕に幸田は…。
「青アザできた…」
ボソッと怒ったような響きの声で言う。
「…ホントごめん、武術習ってて…」
怪我をさせてしまった罪悪感で、下手に出た僕を見つめてポソっと呟く。
「…Kiss」
「は?」
聞き返してしまう。
「…Kiss、許してくれたらいい…」
幸田は、整ったカッコいい顔を微笑させ、みかえりを要求してくる。
「はいー?僕たち友達だよね?」
一応、聞いてみたけれど…
「そう、フレンドリーなKissだぜ!くすのきっ」
「はぁ?ぇー…、ぁー、う゛ーん…」
幸田の言葉に、かなーり苦悩する僕。
その僕を期待で瞳を輝かせながら良い返事を待つ幸田、僕としては嫌だけど…
「……うーん…わ、分かった…い、言っておくけど寮以外の場所じゃダメだからね!」
幸田の瞳におされてOKしてしまう…。
「やった!俺って幸せ~っ」
幸田は、さらに僕を抱きしめながら喜んでいる。
マズかったかな…やっぱり。
「でも、それ以上は絶対ダメだからね…」
不安にかられつい言ってしまう。
「え?それ以上って?」
「あっ…」
「…それ以上、のコト…?」
何やら想像するように呟く幸田。
僕は慌てて…
「あーッ!なんでもないっなんでもナイ…」
あらぬ事を想像されるだけでも嫌だ~、と、幸田から離れて声を出してしまう。
「なんだよっ教えろよ、それ以上のコトしたことあるのか?」
興味深々に問ってくる。
「ないないっ!まったくナイよっ!」
早くこの話題から逃れたくて頭を振る。
「…ケチ」
ぼそっと不機嫌に呟いている。
ともだちにシェアしよう!