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第21話

僕の姿をしばし見つめ幸田は… 「わかった」 ぼそっと言って部屋を出て行ってしまう。 「…わかったって?」 ぽつりと繰り返してしまう言葉。 何を分かったんだろう?僕が断ったってコトを分かってくれたのかな… 幸田の急変した態度に不安がつのる。 僕の言い方が悪かった? でも、だからって幸田の好きなようにさせたら、僕は…。 これから…幸田はどんな態度で接してくるんだろう。 なんか恐い…。 パタンと静かに部屋の戸を閉め…自分のベッドへ倒れ込む幸田。 「くそーッ!」 イライラして枕をコウジのいる部屋の壁に投げつけてしまう。 (なんだよ、あからさまに拒否してっムカツク!…そんなに俺は嫌かッ!) 心で怒りを爆発させる幸田だが…なぜか、不意に…ポロッと涙が零れる。 (…バカじゃん、俺…) 胸が絞めつけられるように痛く苦しい…こんな気持ちを味わうのは初めてで…。 戸惑ってしまう。 (…なんでこんなに苦しいんだ?…思い通りにならないから?) 自分自身に問いつめる。 (でも違う、俺はただ…純粋にくすのきの態度が辛かったんだ。俺を天敵かなにかみたいに…その拒絶がイタかった…) 考えていくウチに、幸田も気付いてくる。 (…俺、本気になってる?…くすのきの事、最初は軽い気持ちでキスしたいとか…欲だけ優先させてたけど…) 今は、くすのきの気持ちも俺の方に向かせたいと思ってる。 ……その事に気付いた幸田。 なんとなく悔しいプラスむかつきが心に湧いてくる。 「…なんか負けてる感じ」 惚れた方が負けってよく言うけれど、くすのきは全然まったく俺を相手にしていない! それが許せない…! 本当は俺が好きになったんだから、くすのきだって俺を好きにならなきゃ、おかしいんだ。 それを無視しまくって、メチャ警戒して…。 なんだか自己中心的に考えがまとまっていく。 「……」 絶対、いつか、くすのきに好きって言わせてやる! でないと悔しいじゃん!俺ばっかり苦しんでさ、絶対優位に立つんだ。 「俺を本気にさせたらどうなるか…まってろよ」 そう呟くけれど…今、くすのきに嫌われたばかりな幸田。 どうやって…好きって言わせよう。 これはかなり難しいコトだ… 押してもよけいに警戒されるだけだし…。 幸田は頭をフル回転させて作戦を考えるのだった。 《キスのリユウ》終了。 →《それぞれの想い》へ続く。

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