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第23話
幸田は何気に視線を僕の方へ向けるけれど、さっき見せた顔は消えていて、機嫌よく笑っている。
まるで昨日の事は忘れているかのように…僕にも軽く話しかけてくる。
なんだか凄く混乱する。
昨日あんなに怒って…
分かったって、本当に諦めてしまったの?僕の事を…
それなら…それでいいんだけど、じゃ…これからは普通に接してくれるのかな?
キスもせず…普通の友達に…。
「!」
一瞬、僕は心が落ち込む雰囲気になってしまったのに気付いて、驚き頭を振る。
なに考えてんの自分、キスだって幸田がムリヤリ言いだした事で…、僕は嫌々つきあってたんだ、別に落ち込む理由はないよ!むしろ喜ばなきゃ!僕は…。
そう思い直す。
その日一日はあっという間に過ぎて、幸田は何も言わないし、逆に僕の態度がおかしいくらいになってきて…、もうこれまでの事はなしにしてもいいのかな…
学校を終えて、いつものように寮に帰る…。
幸田は部活で、まだ帰らないハズ。
自室に入って、ひと息つく…。
今日の幸田は普段通り…学校で気まずくならなかったから、とりあえず良かった。
今日は僕の方が戸惑っていたけど、幸田がいつも通りに接してくれるって分かったから、僕もヨケイなことを考えずに幸田と関わろう。
そう心に決める。
でも…幸田に本当の気持ちを聞いてみたい、じゃないと安心出来ない。
昨日の幸田と比べると…何か偽ってるようで…気になる。
「ご飯行こうかな…」
時計を見てぽつりと呟き…自室を出る。
幸田は帰ってきた様子はない…
しばし幸田の部屋を眺めていると、ガチャと寮の入口のドアが開く。
少しドキッとして振り返ると、やはり幸田が帰ってきていた。
幸田は僕が見ると視線を避けるように下を向いて、靴を脱いでいる。
「お、おかえり」
一応、いつものように声をかける。
しかし…幸田は…
「……」
何の返答も返してこない。
「幸田…?」
無視…?
にわかに信じられなくて名前を呼んでしまう。
以前は煩いほど話しかけてきていたのに…。
「……」
幸田はその呼び声にも反応せず、それどころか僕の方を見ようともしない…。
何か機嫌が悪くなる事があったのかな…それともわざと?
「…どうかした?幸田」
真意が知りたくて問ってしまう。
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