23 / 275

第23話

幸田は何気に視線を僕の方へ向けるけれど、さっき見せた顔は消えていて、機嫌よく笑っている。 まるで昨日の事は忘れているかのように…僕にも軽く話しかけてくる。 なんだか凄く混乱する。 昨日あんなに怒って… 分かったって、本当に諦めてしまったの?僕の事を… それなら…それでいいんだけど、じゃ…これからは普通に接してくれるのかな? キスもせず…普通の友達に…。 「!」 一瞬、僕は心が落ち込む雰囲気になってしまったのに気付いて、驚き頭を振る。 なに考えてんの自分、キスだって幸田がムリヤリ言いだした事で…、僕は嫌々つきあってたんだ、別に落ち込む理由はないよ!むしろ喜ばなきゃ!僕は…。 そう思い直す。 その日一日はあっという間に過ぎて、幸田は何も言わないし、逆に僕の態度がおかしいくらいになってきて…、もうこれまでの事はなしにしてもいいのかな… 学校を終えて、いつものように寮に帰る…。 幸田は部活で、まだ帰らないハズ。 自室に入って、ひと息つく…。 今日の幸田は普段通り…学校で気まずくならなかったから、とりあえず良かった。 今日は僕の方が戸惑っていたけど、幸田がいつも通りに接してくれるって分かったから、僕もヨケイなことを考えずに幸田と関わろう。 そう心に決める。 でも…幸田に本当の気持ちを聞いてみたい、じゃないと安心出来ない。 昨日の幸田と比べると…何か偽ってるようで…気になる。 「ご飯行こうかな…」 時計を見てぽつりと呟き…自室を出る。 幸田は帰ってきた様子はない… しばし幸田の部屋を眺めていると、ガチャと寮の入口のドアが開く。 少しドキッとして振り返ると、やはり幸田が帰ってきていた。 幸田は僕が見ると視線を避けるように下を向いて、靴を脱いでいる。 「お、おかえり」 一応、いつものように声をかける。 しかし…幸田は… 「……」 何の返答も返してこない。 「幸田…?」 無視…? にわかに信じられなくて名前を呼んでしまう。 以前は煩いほど話しかけてきていたのに…。 「……」 幸田はその呼び声にも反応せず、それどころか僕の方を見ようともしない…。 何か機嫌が悪くなる事があったのかな…それともわざと? 「…どうかした?幸田」 真意が知りたくて問ってしまう。

ともだちにシェアしよう!