翌朝…普通に登校する僕。 教室に入って、後ろの席のたくみにまず声をかける。 「おはよ…」 「おはよう！くすのきっ！」 その声を遮って元気よく声をかけてきたのは…長身美形な幸田だった。 「こっ幸田？…オハヨ」 おずおずと答える。 いつになくハイテンションな幸田は、僕の机の端に座りながら次々と言葉をかけてくる。 「あぁ、そうだ、くすのき今日の英語の時間、文訳あたるだろ、やってきた？」 「えっ、そっか…次僕からだ」 すっかり忘れていた。 英文訳なんてしてきてないや…内心あせっていると。 「ハイ」 それだけ言い、訳されたノートを渡してくる幸田…笑顔のまま… 「えっ！」 どうやら貸してくれるらしい…でも幸田の事だ、タダで貸してくれはしないだろう。 じとーっと、ノートを眺めていると…。 「ん？何…」 「幸田、なんか見返りを要求する気でしょう？」 つい、いつものように問うと。 ちょっとショックを受けた顔をして言い返してくる。 「なっ、いらないって、見返りなんて…人が善意で貸してあげてるのに」 悲しむフリをして言っている。 「…だって、らしくないよ？幸田」 さらに疑って問うと… 「ふーん、いいんだー…くすのきの中では俺はそういう人間なんだよなー…」 スネたように言葉を出す。 「ごめん…なんか調子狂うなぁ…でもありがたく貸していただきます」 そう僕が頭を下げると…にこにこして… 「どーいたしまして」 そうとだけ答える幸田。 本当に何も要求なしなのか…。 今日の幸田はいつも以上に優しい気がする。 それに対していちいち裏があるんじゃ…と疑ってしまう僕は、かなり警戒してるってことなのかな。 「それより、どうしたの？ここ…」 僕は自分の口元を指して聞いてみる。 幸田の口元には殴られた跡のようなアザが小さくできている。 この問いに一瞬無表情になる幸田だけど、すぐに笑顔になり… 「ん？コレ…名誉の負傷！」 「はぁ？意味不明…」 幸田はケンカなんか仕掛ける奴じゃないし…どうしたんだろ、ま、いっか…。 「幸田、そろそろ席に戻った方がいいよ、始まるって…」 「ほーい…また後でな」 手をひらりと返し席へ座った。