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第30話
ようやく落ち着いて、振り返って、たくみに声をかける。
「おはよ、たくみ」
しかし…たくみは微妙に視線をそらして小さく答える。
「…おはよう」
そして視線を戻して僕を観察するように見るたくみ。
なんか怒ってるみたい…。
「…何?どうかした?たくみ」
聞かずにはいられなくて聞いてみる僕だけれど…。
「…別に、前向けよ、先生来たから…」
そっけなく返された。
親友にそんな態度を取られるとかなりショック…
何がたくみを怒らせているのか、気になって仕方ない僕だった。
それから昼まで、たくみのテンションは低いままで…理由を聞こうにも今日にかぎっていつも以上に幸田が付きまとってきて聞けないし…。
「くすのき!早く食堂いくぞ、席なくなる!」
昼休みに入ると同時に声かけてくる幸田。
「…先行って、席取っておいてよ。ノートまだとり終わってないから…」
なんだか煩気に答えてしまう。
たくみのコトが気になって、幸田を相手にする余裕がない。
しかし幸田は怒るでもなく…
「わかった、絶対こいよ」
ふっと笑って、耳元で囁く…。
その行動に、さっと身を引く僕。
それを見て笑いながら軽く手を振って食堂へと姿を消す。
僕の態度を笑って流すとは…やっぱり変だ。
たくみも幸田も…。
「……!」
もしかして…昨日二人の間で何かあったのかも、はっと思う。
その時、後ろから僕の肩を軽く叩く手…
「えっ!」
驚いて振り返ると、たくみが呼んでいた。
たくみは僕の瞳を見て静かに…
「…ちょっといい?」
ついて来て、と言うように立ち上がり目線で呼ぶ。
「え…たくみ、うん」
とりあえず僕も話がしたかったので、たくみについて行ってみる。
別棟の移動教室がある前まで来て歩みを止めるたくみ…
昼休みのこの時間、移動教室を使っている者はいないので静かなもの…。
「…ごめん、みんながいると聞きづらかったから」
ぽつりと謝るたくみ。
「…聞く?」
たくみの言葉を拾い聞き返す。
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