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第54話
「えっ?」
「…ツラそうだから」
「どうして?余計なこと考えなくていいんだから喜んでるよ…たくみだってしゅんすけと別れるの賛成してたでしょ?」
そう強がってみるけど…
「…そうだけど、わかった。今日気晴らしにカラオケでも行こう、ふっきる為にな」
たくみはちょっと切なそうな顔をして…元気づけるように笑顔で誘う。
「うん…ありがと、たくみ」
たくみは分かってるんだ…僕がしゅんすけのこと好きなの…
だから深いところを心配してくれる。
たくみに心配かけてばっかりだ…
ごめんね、たくみ…ありがとう。
しっかりしなきゃね、もっともっと。
そう自分の心に言い聞かすのだった。
その日は、日が暮れるころまでたくみと一緒にいて、その足で自宅に帰る。
とても瞬助のいる寮には帰れなかったから…
「ただいま…」
リビングに入ってソファに座ってテレビを見ている人物に声をかける。
「あれ?コウ?どうした?」
振り返って驚くのは、今日も美人な僕の腹違いの兄、アキラ。
「特になにもないけど…たまには帰って来てもいいでしょ、ここは僕の家でもあるんだし、アキ兄の様子を見に帰らないと心配だしね」
にこっと笑って言ってみるが…
「…あっそ」
どうやら信じてもらえてないらしい…
「…あれ、ルードくんは?」
一緒に住んでるはずのアキラの恋人である少年の所在を聞いてみる。
「もう寝てる、風邪気味なんだよ」
「そうなんだ…」
「アイツ、けっこう風邪ひきやすいんだよな…自己管理が甘いんだよ」
ちょっと顔をしかめて言うアキラ。
「アキ兄に言われたくないと思うけど…」
よく体調くずす病弱なアキラにはね。
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