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第65話

ホテルの一室。 柔らかいベッドの上… 手慣れた様子で美女の服を脱がせ、首筋へ口付けする。 香水の甘い香り… あいつとは全然違う… 流れるように美女の唇を奪おうとするが… 不意に動きを止める。 アイツとキスが日課になって…アイツ以外とはしてなかった。 アイツがいれば…俺はそれで良かったから… なのに… 『誰でもいいくせに!』 『僕じゃなくてもいいくせに…』 『一緒にいなくていいよっ』 次々と…繰り返し頭によぎる、アイツの痛い言葉… はじめて見た…アイツの涙… 頭にちらついて集中できない。 「っわけねぇだろ!」 急に頭を抑えて怒鳴ってしまう。 「何?どうしたの?瞬助…」 驚く先生。 アイツが別れるって言ったから… 俺はフリーだから誰と何しようと勝手だ… なのに… 「…あぁっもう!萎える!」 全然集中できねぇ! 「なっなによ、失礼ね…」 少し気分を害したように言う美人先生。 「ワリィ…駄目なんだ。悪ぃ…俺、駄目だ」 顔をくしゃっと歪めて、首を振る。 「どうしたのよ…」 その痛々しい様子に優しく聞いてみる先生。 ベッドサイドに二人並んで座って… 瞬助は先生に相談する。 「好きなコが出来た?」 そう首を傾げてくる先生。 静かに頷く瞬助… 「俺…今まで自分から好きになったことなくて…」 どうしたいのか解らなくなって、自分の感情を持て余してる。 「いつも告白されて、いいなって思ったら付き合ってた…だから、わがままも通ったし、別れるのも簡単だった」 今まではそうだった。 なんとなく付き合ってあわないって思ったら自分から別れを切り出して…… 泣いた女子もいたし怒った女子もいた。 『仕方ないだろ、お前と居ても面白くねーんだから…悪ィな』 酷い言葉… 前はためらいなく言ってた。 『僕、瞬助と居ても楽しくない…』 不意にそんな言葉が… コウジの声で聞こえた気がした。 「…ッ」 ズキッと胸の奥がえぐられた感覚。 コウジにそんなことを言われたら、ツラくて苦しくて…耐えられない。

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