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第66話

付き合って別れるとき、自分はとてつもなく酷いことを言っていた。 本当に酷い奴… だから? うまくいかないのは… 「瞬ちゃん…」 そっとなだめるように肩に触れる先生。 身体だけはたくましく成長した教え子に… しばらく無言で歯を食いしばる瞬助。 「くそっ…」 両の手を握りしめる。 だから何だ… コウジのことを諦めろって? そんなの無理だ… 俺はコウジが好きだし、一緒にいてーし、話して触れて… どう繕ったって抱きたいって思うし… 「……っ」 今更判った… 本気で人を好きになるってこと… その苦しみ… 報われない時の… 自分が納得できないうちに唐突に別れを告げられる苦しさとムカつき。 どうしようもできない苛立ち… 「アイツは、俺が好きになったはじめての奴なんだ…だから、今度は…別れようって言われたら腹が立って…しかもアイツ、全然やらせてくんねぇし」 報われない想いを…言葉に出してみる。 「はじめてなんでしょ?」 落ち着いた優しい声が…苛立ったこころを撫でる。 確かに… はじめてのはず… だから余計綺麗に見えて… 自分がコウジにとって最初の奴になりたいって強く思って… はじめてだから、待つつもりでいた…俺なりに我慢してきた。 「だけど、好きなら…ふつー愛し合いたいもんだろ?好きって…」 不意に言葉が続かなくなる。 「っ…」 気付いてしまう。 「…俺、アイツに好きって言われたことない」 愕然とした… 「いつも俺が一人で…」 最初は好きって言わそうと考えてたけど、付き合えるって舞い上がって肝心の言葉は聞いたことがない… 「……」 好きになってるから付き合ってるんだと思い込んでたし… 自分に自信もあった。 だからわざわざ確認してなかったけど… ホントはあいつ…俺のことなんとも思ってなかったら? ただのダチだと思っているのだとしたら… はじめて不安にかられ…ぎゅっと両手にこぶしを握る瞬助。 「話し合わなきゃね…」 そっと道を開く言葉。 「……何をどう?」 話さなきゃならない…それは分かる…けど、いつも話し合いにならなくて… どうすればいいのか… 両手を膝の上で組み合わせる。

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