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第71話
「そっか、楠木は?大学生や現役の医師とかも来て勉強になると思うけど?」
「僕は…」
「こいつも、そんなことしてる暇ないんで…」
なぜか瞬助が断るが…
「いや、俺は楠木に聞いてるんだぜ、サークルとか入ったことない?結構いい刺激になるぜ?」
先輩は続けて聞いてくる。
「僕は…」
ちらっと瞬助を見ると、やはり厳しい目つき…
瞬助には彼女がいて…
僕にはいない…
そこへ行ったらすぐ彼女が出来るとは思わないけど…瞬助以外の人と出会って、話してみたい…
一時でも瞬助のことを頭から離すために…
「行ってみようかな…」
そう答えるコウジ。
「なっ…」
驚く瞬助。
「ホントか?よっしゃぁ、嬉しー、楠木が来てくれたら盛り上がるし、幸田くんにも出来れば来てほしかったけどな…ま、いっか」
ガッツポーズで喜ぶ先輩。
「ちょっと待てよ」
瞬助は納得できなくて呼び止めるが…
「あ、先生だ、もう来てる。行きましょ先輩」
そう先生の元へ走っていくコウジ。
「あぁ、じゃな」
先輩は瞬助に一応手を振ってコウジを追い掛けていく…
その場に一人取り残される瞬助。
苦い気持ちで…拳をにぎりしめる。
委員会の朝当番が終わって、教室に戻るコウジ。
朝、あんなことを言ったからまた突っ掛かってくるのかと身構えていたけれど…瞬助は話し掛けてこなかった。
彼女が出来て…
僕のことは…もうどうでも良くなったのかな?
ちょっと切なく思うけど…自分が望んだことだから…
悲しいなんて思っちゃいけない。
そう自分の弱い心を叱咤する。
瞬助と話さないまま、昼休みが来る。
相変わらず瞬助は女子たちと話している。
「昼ごはん行こうたくみ!」
「うん、あ、雨降り出してるな…」
ふと窓の外を見てたくみが呟く…
「ホントだ…」
朝は晴れていたのに…ドシャ降りの雨。
「最近雨多いな…」
たくみと並んで廊下を歩きながら、ぼんやり外を眺めていると…
「楠木先輩!」
普段は呼ばれないかわいい声に呼ばれて驚くコウジ…
「ちょっと来て下さい!」
見ると一年の女子二人がニコニコ笑って呼びかけてくる。
けっこうかわいいコだ…
「え…?」
驚いている間に、女子二人に連行されてしまった。
たくみを置き去りにしてきてしまったのが気になるが…
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