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第72話
特別教室へ続く階段下まで来て…
「すみません、先輩…」
「ちょっとお願いしたいことがあって…」
女子のその言葉を聞いて分かったように頷くコウジ。
「あぁ…そうゆうことね。あの、幸田瞬助に用があるなら本人に直接言った方がいいよ」
瞬助と同室のため以前からこの手のことはよくあるのだ。
ラブレター渡してくれ、とか、伝言伝えて、とか…
その度にイヤな気分を味わってきた。
「だって、一年生だと幸田先輩に近づけないんです!」
サポート役の女子がそう繋ぐ…
「女子の先輩の目とかがあって…なかなか、でも諦めたくないから…お願いします!これを幸田先輩に確実に渡してください!」
やはりラブレターだ。
「…でも、困るよ」
だいたいこういう物は受け取らないことにしている。
断る理由を考えるが…
「お願いします、できるだけ誰もいない所で渡してください!」
頭を下げる女の子。
「このコが真剣に書いた手紙だから、幸田先輩に必ず渡してくださいね!」
不意に手紙をコウジの手に押し付けると、二人は頭を下げて走り去ってしまう。
「あ、ちょっ!待ってっ」
呼び止めるがあっという間に二人の姿は見えなくなった。
「……もぅ」
ただでさえ話しづらい状態なのに、こんな…
そう手元に視線を移す。
手紙は…可愛い便せんが使われている。
女の子らしく可愛い柄で…
ラブレターね…
「はぁ…」
もう一度大きくため息をついてしまう。
そして教室に戻るコウジ、たくみはもう戻ってきていて…
「コウジ、なんだったんだ?」
心配して聞いてくる。
「うん、いつもの瞬助がらみ…ラブレター渡せって」
「そっか、幸田と同室だとそういうのがあるからヤだな…」
「うん…」
仕方ないから帰って寮で会った時にでも渡すかな…
最近は校内であまり一緒にいないから…
そして、放課後。
部活に行くたくみを見送って寮に帰るため靴を履き変えようと下駄箱をあけると…
ひらっと一通の手紙らしきものが落ちた。
「え、まさかこれもしゅん宛てとか?」
げんなりして手紙を拾いあげる。
「…!」
宛て名を見て驚くコウジ。
自分宛てだ…
すぐ封筒を裏返し差出人を確認して…
「だよね…」
再びげんなりする。
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