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第73話

差出人は『新明徹』 男だ… この外見だから、男子からラブレターもらうことは…中学の頃から少なからずあるコウジ。 しかもこの学校は共学とはなっているけど圧倒的に男子の割合が多いため、そういうのも多いのだ。 「はぁ…」 ため息をつきながら寮へと戻るコウジ。 ただでさえ少ない女の子からラブレターもらうなんか瞬助レベルじゃないと無理なんだよね。 寮の廊下を歩きながら…受け取った二通の手紙を出して見る。 「……」 そう思うと瞬助はすごいよね。 バレンタインを挟んでたからってこの学校で三ヶ月の間に女子12人から告白されてるんだから… 「はぁ…」 馬鹿みたい… 自分の貰った手紙と瞬助宛ての手紙を見比べてみると…なんだかむなしくなって、大きく溜息をついてしまう。 「何ため息ついてんだよ…」 「わっ…瞬助!」 何気に声をかけてきたのは瞬助だった。 急に後ろから声をかけられドキッとして…持っていた手紙を落としそうになる。 「何見てんだよ?」 手元を覗き込んでくる。 「べ、別に…」 下がりながら、とっさに二通の手紙を後ろへ隠す。 「何隠してんだよ、見せろよ…」 「待って、瞬のはこっち、一年の女の子から!渡すように言われたから!」 可愛い便センの方を押し付け渡そうとする。 「はぁ?」 「ラブレターでしょ…」 ちょっと顔を斜めにそらしながら言う。 「いらね、そっちは何だよ」 むっとしながら、コウジが渡そうとする手紙には手を触れず。 隠している方の手紙を見ようとする瞬助。 「別になんだっていいでしょ…しゅんはコレ受け取ってよ、絶対渡すように頼まれたんだから…」 自分宛ての手紙を鞄に隠し入れながら言う。 「ンなん頼まれるなよ。…じゃ隠してる方の手紙見せてくれるんなら貰ってやるよ」 コウジの言葉にイラッとしながらも条件を出す。 「えっ…そんな、これは…」 可愛い女子から手紙を貰っている瞬助に、男からの手紙なんか見せたくないし知られたくない…困って詰まるコウジだが… 「……」 瞬助は答えるまで黙って待っている。 「う…わかった、部屋でね。僕だってまだ読んでないし…」 渋々頷くコウジ。 「…ならいくぞ」 瞬助はそう呼んで寮の部屋を目指して早足で歩き始める。 無言で、寮の自分達の部屋へ帰ってくる二人。

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