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第74話

コウジは息をついて振り返り、長身の瞬助を見上げて… 「とりあえずこれ」 女の子から受け取った瞬助宛てのラブレターを手渡す。 「……」 無言で受け取ってポケットへ入れる瞬助。 「……、こっちは僕宛てだから…」 そして、見せろと言われた手紙も渋々渡す。 「新明徹?誰だよ…」 差出人を見て顔をしかめ聞く。 「知らないよ、返して、一応読むから…」 手紙を返してもらおうとするが… 「んなもん読まなくていいだろ、捨てとけよ」 瞬助は返そうとしない… 「駄目だよ、呼び出しとか書いてる時あるでしょ、無視したら余計ややこしいことになる時があるから…」 ムスッとしながら返してもらおうとするが… 「なったことあるのかよ」 再び聞く瞬助… 「……」 こくんと頷く。 それを見てまた眉間にシワを寄せる… 「だから返して」 コウジは頼むが… 「俺が読む」 ぶっきらぼうにそう口を開く… 「馬鹿、僕宛てなんだよ?」 驚きながら言葉を返す。 「直接渡されたのか?」 ややキツい視線をおくりながら聞いてくる。 「下駄箱に入ってた…」 ぽつりと答えると… 「そんなん直接渡さなかったら誰に読まれても文句はいえねぇだろ!」 「もぅ!だめだよ、返して!ホント、しゅんって常識ないんだから…」 隙を見て手紙を奪い返す。 「ッ、やるかよ!!」 さっと、再びコウジから手紙を奪うと、自分の部屋へ走っていく瞬助。 「あッ、瞬助!待って!」 もう!と怒って慌てて追うコウジ。 ドアを締めようとする瞬助だが、割り込むように部屋に入る。 「読ませろよッ!」 手紙を持った左手を高く上げ、取られないよう必死な瞬助。 「嫌だ、返して!」 コウジは取り返そうと必死に腕を伸ばすが…身長差がかなりあるため、まったく届かない。 二人とも意地になって攻防しているうちに、いつの間にかかなり密着していて… コウジは瞬助の制服の脇辺りを掴んでジャンプしたり、つま先立ちになり手を伸ばしている。 「……」 ふっと、渡さないよう必死になっていた瞬助が、手紙を手から離し… 手紙がひらひらと床へ落ちていく… 「え…っ!?」 驚くコウジ。 手紙を追って視線を走らせるが… 手紙が床へたどり着く前に…ぎゅっと身体を抱きしめられた。

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