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第102話
「おー、見てたか?俺1位で…って、おい!」
片手を上げながら普段通りなつもりで、少し離れた場所から話しかける瞬助だったが…
「ッ…!」
無理ッ!
このままだと確実に目立ってしまう…その危機感で、なりふり構わず猛ダッシュでその場を後にするコウジ…
「おいッ、て…速ッ!」
呼び止める瞬助が驚くほど俊足で姿を消す…
「んだよ、あいつー」
周りの女の子が騒いでいるが…瞬助にとっては毎度のことなのであまり気にはならない…
コウジの態度にぼやきながら、仕方なく部活に戻る。
コウジは先に寮に帰って、自室で勉強をしていると…
『ただいまー』
玄関の方で声がする。
部活を終えた瞬助が帰ってきたのだ。
急に帰ったからきっと何か言いに来るだろうな…
と思いながら、ため息をつきつつ瞬助を出迎えに動く。
案の定、まっすぐコウジの部屋の戸をノックする瞬助。
すぐ、戸をあけて…
「おかえり」
出迎える。
「ただいま。つか、なんで急に帰るんだよ」
コウジを抱きしめ、とりあえずキス…瞳を重ね聞く瞬助。
「普通帰るでしょ」
「なんで!」
不満そうに言い返す瞬助。
「急に近づいてくるから」
コウジは勉強机に戻りながら答える。
「だってお前、俺のこと無視してたろ」
瞬助はそのあとをついていき、コウジの肩に手をかけていう。
「…そりゃするよ、僕は瞬と違って目立ちたくないの」
「目立たせようなんて思ってねぇし、普通に話しかけただけだろ?」
勉強机の端に座って腕を組み、コウジを見下ろしながら答える。
「それが目立つんだって…もう僕、見学行かないから」
「な、なんで?」
コウジの言葉に慌てる。
「だって見学に来てるの女子ばっかりだったし…目立ちたくないし…」
「だから、別に目立ってなかったって…お前私服なら女子にも見えるし…」
「瞬!?」
「いや、そうじゃなくて…ええと、コウジが見に来てくれたから、今日めちゃ張り切って部活頑張れたんだぜ俺!」
首を振って、コウジをなだめようと来てほしい理由を伝える。
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