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第103話

「そう言われても…」 困ってしまうコウジ… 「ちゃんと見てたか?」 「見てたよ、一位でゴールしてた」 そう頷く。 「なんだ、見てたのか…ならなんで無視すんだよ」 瞬助的にはコウジに誉めてもらいたかったのだが… 「あんな大勢いる中で、瞬助と話せるわけないでしょ!」 「なんで…」 瞬助は首を傾げる。 「自覚ないのか…コイツは」 そう溜め息がもれてしまう。 「はぁ?」 本当に分からない様子で、コウジの言葉を聞き返す。 「とにかく、観客がいる前で話しかけてくるならもう観に行かない」 「話しかけなきゃ見に来るのかよ」 すぐ言い返す瞬助。 「まぁ…それなら、少しくらいは…」 微妙に頷き、答えるコウジ… 「じゃ…もう話しかけねぇからまた観に来いよ」 すかさず誘う。 「…なんでそんなに…」 見学に来させたいのか分からなくてボヤく… 「だって、今日お前に見られてるって思ったらいつもより速く走れたから…」 コウジの茶色い髪に触れながら伝える。 「えっ?ホントに?」 驚いて瞬助を見上げるコウジ… 「あぁ、だからまた観に来いよ」 そうコウジのこめかみ辺りにキスを落としながら誘う瞬助。 「……うーん、でも土曜日だけね…」 「いいぜ、ちなみに来週は予選大会の選考会だから絶対見に来いよな!」 「はいはい、分かりました…頑張ってね」 少しでも瞬助の力になれるならと、応援するコウジ。 「おう!」 爽やか笑顔で返事する瞬助。 また、今日のような瞬助の人気ぶりをみないといけないと思うと、やはり気は進まないコウジだったが…。 午後もなんだかんだと一緒に過ごしている瞬助とコウジ… 昼食をとった後は瞬助の部屋で課題を片づけていた。 「あっ!そういえばっ」 不意に声をだすコウジ。 「何だよ」 「今何時!?」 慌てたように聞く。 「4時半だけどー?どした?」 のんびりモードの瞬助はのほほんと答える。 「僕、ちょっと出てくる」 立ち上がりながらいうコウジ。 「どこへ?」 「これ、断ってくる」 コウジは昨日貰ったラブレターを見せていう。 「あ、忘れてた…つーかそんなんほっとけっ」 それを見るとやはり不機嫌になる。 「そういう訳にはいかないよ、瞬助こそラブレターは?」 「忘れてた…」 制服のポケットの中に入れたままの瞬助。 「最低…」 それを聞いて冷たい視線を送る。

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