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第104話
「俺はコウジのことで頭がいっぱいだったんだよ」
そう言い訳する瞬助。
「ばか、読んであげなよ…」
「なっ、おま、俺のこと好きなんだよなぁ?」
コウジの態度に驚いて聞く。
「えっ…うん」
恥ずかしながらも頷くコウジ。
「なら普通彼氏宛てのラブレターなんか読んで欲しくないとか思わねえ?」
「でも無視するのは後々面倒なことになりそうだし…渡すように頼まれた手前…」
そう理由を話すコウジ…
「ったく、頼まれんなよな…」
まだ不機嫌な瞬助。
「仕方ないでしょ、無理矢理押し付けられたんだもん…瞬助は今までラブレターとか貰ったらどうしてたの?」
話題を少しずらしてみる。
「んー、一応顔見るために会ってみる」
「……それで好みだったら付き合ってたの?」
じとーっと視線を送り聞く…
「まぁな…でも、だいたいは断ってたからな!手当たり次第みたいな目でみるなよ」
「…瞬は僕とは全然ちがうから」
瞬助から視線を外して、ぽつりと呟く。
「どういう意味だよ」
「別に、ラブレターちゃんと読んで断ってきなよ、僕も行ってくるから」
コウジは話を終わらせて部屋に戻ろうとする。
「俺もついて行く」
が、瞬助はそう切り出す。
「は?」
驚くコウジだが…
「お前狙ってる奴がどんな奴か気になるだろ」
そう言いながら、自分が貰ったラブレターを手に取り、行く気満々になる。
「はぁ…断るだけなんだから、瞬は瞬のを断ってきなよ」
「いーや、見届ける!んで俺のも来い!」
どうしてもついて行きたい瞬助。
そしてまた勝手な思いつきを言っている。
「はぁ…もぅ」
やれやれとなるコウジ。
言い出したらなかなか聞かない瞬助を説得するのも疲れてきて大きくため息をついてしまう…
2人は外出の準備をし、まず時間指定で早いコウジの方から行く…
「あ、いた」
遠くの物陰から姿を確認して呟くコウジ…
体育館裏の壁に寄りかかるように待っている男子生徒。
「あいつか…」
瞬助はその人物を確認すると睨んでいる。
「いい、絶対出て来ないでよ!」
頼むように瞬助に約束させる。
「解ってるって、さっさと断ってこい!」
不機嫌に顔をしかめながらも頷く…
「はいはい」
瞬助に見られながら断らないといけないので、落ち着かない気持ちではあるけれど、息をつき、返事して1人向かう。
「…新明君?」
そっと窺いながら声を掛ける。
「あ、来てくれたのか…」
笑顔を見せる相手。
違う科の同じ学年の生徒。
「一応、無視はできない性格だから」
「ありがとう。俺…楠木君ともっと仲良くなりたくて手紙…」
少しコウジに近づきながら答える新明。
「ごめん、新明君の想いには答えられない」
すぐ頭を下げて断るコウジ。
「友達でいいんだ」
すると新明はそう言葉をかえて食い下がる。
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