166 / 275
第166話
「ま、気楽に見学して」
「はい」
返事を返して、会議室に入り、やや後ろの席に3人並んで座る。
サークルはそこはかとなく始まる。
「そして、今日はゲストに来てもらっています、楠木くん!」
様子を伺っていると、司会の大学生にいきなり指名されるコウジ。
「えっ」
驚いて固まっていると…
「ちょっと立って、そこにいる楠木昂治くんは楠総合病院、脳神経外科の賢医、楠木満院長先生の息子さんです、今日は見学にきてくれました」
紹介しながら促す司会者。
それを聞いて…
「おぉ、あの…楠病院の!」
「あの脳外科医の!」
現役の医師や研修医が座っているあたりからざわめきが起こる。
「よろしくお願いします、あの…」
一応、立ってお辞儀をするコウジだが…困惑する。
「いいよ、楠木くんは座って、皆さんいつも以上に研究発表頑張ってくださいね」
なんとか注目から解放されるコウジ、席について俯く。
「お前の父親ってそんなにすげーのか?」
そこへ左隣に座っていた瞬助が耳打ちしてくる。
「う、うん…国内でも数人しか出来ない技術を持ってるっていうけど…」
「へぇ…手術してるとこ見たことあんのか?」
興味をひかれ、さらに聞く…
「うん、何度か、でも父さんの手術しか見たことがないから、凄さの比べようがないっていうか…」
首を傾げながら答える。
続けて…
「でも、確かに難しい手術の時は見学者が沢山きてたよ」
「それ結構すげーだろ」
瞬助も感心する。
ともだちにシェアしよう!