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第168話
「はい…」
「楠木と話したいってヤツがいるんだ、いいかな?」
「あ、はい」
頷いて立ち上がる。
「どうした?」
それにすぐ気付いて瞬助が聞いてくる。
「ちょっと呼ばれたから…行ってくるよ」
「呼ばれた?」
「すぐ戻るから」
そう答えて、瞬助とたくみを残して先輩についていく。
その様子を窺う瞬助…
部屋の端までいくと、若い大学生風の男性が待っていた。
「はじめまして、糸崎と言います」
その人は愛想良く笑って握手を求めてくる。
「あ、はじめまして」
コウジもお辞儀して握手を交わす。
「楠総合病院の院長先生の息子さんですよね」
「はい、」
「院長先生には子供の頃、脳の腫瘍の手術をしていただいて命を助けていただいたんですよ」
「あ、そうだったんですか」
「はい、後遺症も残らず、命を繋ぎ止めてもらって、そのご恩と感謝から医者を目指してここまできたんです」
「そうですか、それは良かったです」
ニコッと微笑み答える…
「楠木昂治くんでしたか、君も外科医を目指しているんですか?」
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