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第169話

「はい、父のようになるのが夢です」 「優秀な医師ですからね…頑張ってください」 「はい、糸崎さんも頑張ってくださいね」 「ありがとう、良かったらこれ、ここで出会えたのも何かの縁ですから仲良くしてください」 糸崎は自分の名刺を渡しながら話す。 「あ、はい。ありがとうございます」 それを受け取り、笑顔をみせるコウジ。 「おい、次始まるだろ!」 不意にコウジの腕を掴んで引いてくる長身の男。 「ちょ、瞬助…」 「席戻るぞ!」 「こちらは?」 「あ、高校で同じクラスの奴で…って、ちょっと」 離して! そう説明しながら、腕を引いてくる瞬助の手を振りほどく。 「行くから先戻って」 「いいから行くぞ!」 再び腕を掴んで引っ張る瞬助。 「すみません、糸崎さんまた…」 どうも強引な瞬助に、息をつきついて行きながら、糸崎に断りをいれるコウジ。 「あぁ…ありがとう」 少し驚いていた糸崎だが返事を返してくれる。 「ちょっと!瞬、離して!」 「……」 ムスッとはしているが腕は解放してくれる。 「もう、話途中だったのに…」 「んだよ、楽しそうに愛想振りまきやがって…」 「はぁ?話してただけでしょ!」 「2人っきりで話す必要がどこにあんだよ!」 「あのね!」 瞬助のいい分にイラっとして反射的に言い返してしまうが… 「2人とも始まるから落ち着いて」 しーっと人差し指を口にあて、ふたたび注意するたくみ。

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