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第4話 浄化の儀と言う名の……

 本家の祭壇に濁ってしまった山神の魂の塊を祀り、浄めの儀を執り行う。魔に侵食された御魂が完璧に元の状態になるには相当の時間を要するだろう。  拓真は最後に深く一例して座敷を後にすると、迷いもなく柊漣の待つ最奥の部屋へと向かった。 「湯浴みはすんだか?」 「山神様の浄化の前に禊はすませてある」 「そうか……なら」  豪奢な刺繍の施された布団の上で、胡座をかいて座る柊漣は拓真に向かって両腕を広げた。拓真は無言で自分の為に広げられたその腕の中に身を擦り寄せた。 「お疲れ」 「うん」 「もっと早くに俺を呼べば良かったんだ。ほら、身体を見せてくれ。傷一つついていないだろうな?」 「あんたの霊力を前に、俺に傷付けられる魔なんていないと思うけど……」  早く、と目で急かされて服を脱ぐのはいつまで経っても慣れないものだ。照れ隠しに睨んでみても、柊漣は三田達に見せたものとは正反対の穏やかな笑みを浮かべて拓真が裸体を晒すのを上機嫌で待っている。 「手を。魔に穢されていないか? そういえばあの女、気安くお前の名を呼んで、胸を押し当てやがったな。穢れた。許せない」 「本領発揮、だな。蛇神様の力で穢れた俺を浄化してくれよ……いつものように」 「いつものように? どっちだ? 人の姿が良いか、それとも――」 「人! 蛇の時はねちっこすぎて、俺の体力がもたない! 解って言ってるだろ?」  柊漣の言う浄化はお互いの唇を噛み合せ、舌を絡ませ合うところから始まる。ゆっくりと時間をかけて、拓真の魂を味わうかのようにじっくりと、口の端から唾液が糸を引いて落ちようとも気にもしない。ただ全裸の拓真を抱きしめて、寒くもないのに拓真の肌が粟立つまで執拗な接吻が続く。接吻に満足すると柊漣は唇をそっとずらし、拓真の首筋を吸い、時に舐めながら、ゆるりと手を動かし始める。拓真は、これから起こる事に対して思わず身をすくめてしまうが、それもいつもの事と柊漣は気にせず、愛しくてたまらないというように拓真の身体の隅々まで手を伸ばす。  回すようにこねるように親指の腹で乳首を押され、後孔の周りを撫で回される頃になると拓真の息は熱くなり、白い肌に朱が差し、たいそう美しく艶めく。その瞬間を待っていた柊漣はそっと拓真を押し倒すと、チロリとぷっくりと立ち上がった乳首を舐めた。 「あっ、それ、やだ……!」 「嘘をつけ。好きだろう? 先の割れた蛇の舌でココをなぞられるの。しっかり勃っているぞ?」  ビリビリと電流と快感の走る身体は更なる快楽を求めて既に雫を垂らし始めていた。身体の変化を突きつけられた拓真はギュッと目を瞑り、切羽詰まった溜め息と共に自ら脚を開いた。 「しゅ、れん……早く……腹の奥、切ない……欲しい」 「ん、そうだな、その前に、下も舐めてやらないとな? 俺が満足しない」 「あ、あぁ、んっ」  柊漣の割れた舌の片方が尿道に入り込むと同時に、抜かりなくたっぷりと湿らせた指を後孔へと押し込んで前立腺を円を描くように刺激するとおもしろい程に拓真の身が跳ねる。弾んだ息を吐きながら潤んだ目で縋るように己を見上げる拓真は実年齢より幼く見え、無意識で柊漣を煽っていた。 「一度、出しておくか?」 「っふ、し、柊漣だって、早く挿れたいだろ? 俺ん中……ぐちゃぐちゃで、んっ、あんたが欲しくてトロトロだぜ?」 「こんな時も気が強い」  そう言うと、うっそりと笑い、柊漣は更に拓真の脚を広げ、赤く脹れヒクヒクと誘うソコへと半身を突き立てた。  熱い! と叫び、仄かに色付いた肌に白濁を飛ばした拓真に深く接吻(くちづけ)た柊漣は赤い眼を細め、汗ばんだ額から頰、鼻の頭と顔中にキスの雨を降らせて最後に溢れた涙を吸い取った。 「拓真? まだトんでもらっては困る。俺はまだ、だ」  言うが早いか、くったりとした拓真をうつ伏せにし、男性の割に細い腰を掴んで引き寄せると再び密着する。そして拓真の反応を見ながら、時に早く時に緩やかに腰を振り、存分に拓磨の声と反応を愉しみ、拓真の精液が色を失くす頃にやっとこじ開けた奥の奥で大量の精を吐いた。 「今日もお疲れ、愛し子」  本当は常に人間の形を取って拓真の隣に立ち、代わりに魔を払ってやりたいと思う柊漣なのだが、この先の事を考えると、拓真を守護し、望まれるなら武器となり、消耗した霊力を直接的に愛し補ってやる今の状況に満足すべきなのだと、己に言い聞かせる――そうでなければ、計画が狂ってしまう。  薄く唇を開いたまま、すぅすぅと寝息を立てる拓真の髪に指を通し、長めの襟足を搔き上げるとそこへ拓真を起こさない程度の力で吸い痕をつけた柊漣は満足気に口の端を微かに引き上げた。  誰も知らない――本人ですら知らない(うなじ)に繰り返しつけられたその痕は薄っすらと銀に輝く蛇の鱗を模していた。 「目が醒めるまでは、俺が胸に抱いていてやろう」  ふふ、と小さく笑った柊漣は上半身は人間のまま拓真に腕枕をし身体を引き寄せ、下半身は大蛇となり苦しめぬ程度に巻きつくと(まじな)いの言葉を囁く。  ――さぁ早く、お前も俺と同じ(モノ)となれ――

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