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第2話 3月の教室①

 ふつうだった和樹は、ふつうの公立中学に進んだ。中学ではふつうよりちょっと上の成績になり、身長はふつうよりかなり伸びた。すると、今まで見向きもされなかった女子生徒たちから注目されるようになったのだが、自分が「モテるキャラ」になっていたことに気づいたのは中学を卒業する間際のことだ。  第一志望の公立高校には落ちて、第二志望の私立高校に入った。「ほぼ全員が大学に進学するが、国公立や難関大学の現役合格者は少ない」程度の進学校。奇人変人もいなければ不良もいない、至って凡庸な学校だ。ここでも和樹は平均よりはちょっと上の成績をキープして、このたび東京の中堅私大に無事に合格した。クラスメートのほとんどの行き先が決まり、自由登校期間ということもあって、みんな気ままに登校している。そんな、ふわふわとした時間が流れている三月の教室。来月には一人暮らしが始まる。目下の和樹の関心事はその新生活のことだった。 「都倉。」名前を呼ばれてふりむくと、クラスメートの田崎が立っていた。

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