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第11話 告白⑤

 和樹は、田崎の両手を押さえつけたまま、どうしていいのかわからず、ただ、つったっていた。田崎の腕の震えが伝わってくる。  中学生の頃、あの女の子に告白して振られた時、なんて言われたんだっけ。家に帰って、部屋でちょっと泣いたのは覚えている。あの日の晩飯は味がしなかった。もちろん振られたことは悲しかったし、傷つきもした。でも、その傷をあの子につけられたとは思わなかった。あの子は今の俺みたいに腕を押さえつけることも、「私に何して欲しいのよ」なんて詰め寄ることもしなかった。そう、思い出した。あの日彼女は、「私なんかのこと好きって言ってくれてありがとう。でも、ごめんね。友達でいたいかな」って言ったんだ。女の子ってすごいな。とっさにそんな気の利いたセリフが言えるんだもんな。俺は田崎にどう言ってやればいいんだよ。あの日、俺も振られること覚悟で告白した。でも、ちょっとは希望も持っていた。あわよくばつきあいたいと思っていたし、キスだってなんだってしたいと思っていた。でも、自分が同性から、そういう感情の対象として見られるなんて、完全に想定の範囲外だ。  いろいろな感情が入り乱れ、口にすべき言葉を探したが、何も思い浮かばない。最終的に和樹は田崎の手を解放し、「ごめん。」と言うだけしかできなかった。田崎の手首にはうっすら指跡が残っていて、申し訳ないことをしたと思った。でも、この「ごめん」はそれに対する謝罪ではなかった。 「いや……おまえは悪くない。」と田崎が言った。  田崎だって、悪いことなんてしてない。俺のことが好き。それだけだ。人を好きになって悪いわけがあるか。「俺は、おまえの気持ちに答えられないけど……。でも、友達じゃダメなのか。同窓会にも来ればいいだろ。それで、また一緒に遊んでさ。」 「今まで通りに、ふつうに?」 「うん、そう。」  田崎の顔が歪んだ。泣くのかと思ったけれど、泣かなかった。「ふつうにできるんだったら、告白なんかしなかったんだよ。」

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