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第16話 ファーストキス②
告白も相手からなら、終わる時もまた相手主導だった。別れの時には決まって和樹が悪いと言われた。いわく、「都倉くんて、私のことどうでもいいって思ってるよね。」「和樹は冷たい。人の気持ちを考えてくれない。」「カズくんに好きになってもらえるようにがんばったけど、もう無理。」「つきあっていても、ずっと片思いしてるみたいで辛かった。」
随分な言われ方だが、和樹としては、どの女の子も好ましく思っていたし、だからつきあったのだ。告白してきたのはこの五人だけではない。丁重にお断りした相手もいる中で、「この子なら」と思って交際をスタートさせ、自分なりに大事にしたつもりだった。キスにしても無理やりしたことなどない。五人中三人とはその先の関係も持ったが、それについても先に誘ってきたのは向こうだ。
勝手に好きになって、誘ってきて、俺はちゃんと誠意を尽くしてそれに応えて、それなのに冷たいとかなんとか。ひどい話だ。ああ、田崎だったら、そんなこと言わないんだろうな。ただ好きって伝えたかった、伝えるだけでいいって。そんな健気なことを言われたら、相手が男でもキスの一つぐらい、しちゃうだろうが。今までの彼女にしても、別れる時は散々でも、最初のキスはそんな感じだった……はず。和樹は歴代の彼女たちと、最初にキスした状況を思い出そうと試みた。
レイカの時は、何度もサインを出されていたのに俺が気づかなくて、最終的に奪われた。それが俺のファーストキスだ。ミナの時は、観覧車が一番高いところになった時にわかりやすく目をつぶって唇をつきだされ、さすがの俺も気がついた。マユは、直球で「キスして。」と言われて、従った。ミサキの時は……。
思い出を整理してみると、和樹のほうから最初のキスを仕掛けたのは、今回が初めてだった。「マジかよ。」和樹は頭を抱えた。
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