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第18話 兄②

 卒業式までは一週間と少しだ。交際期間最短の彼女とは一週間のつきあいだったことを思えば、意外とやれることはありそうな気がした。最短彼女ミサキとは友達の彼女の友達として出会い、出会ったその日にキスをして、翌日には二人きりで会い、ベッドインした。ミサキは和樹より年上のフリーターで一人暮らしだったものだから、連日彼女の部屋に通っては何度も行為に及んだ。そして一週間後に「ヤレるからつきあってるだけでしょ。最低。」と言われて部屋を追い出され、速攻で連絡先を変えられ、それっきりだ。和樹は、今さっきまで自分は歴代の彼女を大事にしてきた自負があったが、少なくともミサキに関しては最低な男だったかもしれないと考え直した。  しかし、今直面している問題はミサキじゃなくてタサキだった。一週間あればいろいろやれると言っても、ミサキ流で行くとすると今日二人きりで会ってキスしたのだから、次回はもうベッドインして、その後はお別れの日まで連日ケダモノ化することになる。  いやいやいやいや、それはない。それはない。何を考えているのだ、俺は。和樹は再度息を止めた。  バスタオルで体を拭く。「脱衣所をびしゃびしゃにしないで」という母親の命により、濡れた体は浴室内で拭くのが都倉家のルールだ。浴室の鏡には自分の裸体が映っていた。それを見ながら、また考える。水泳部だったから、田崎の海パン一丁姿は飽きるほど見ている。それどころかシャワールームだの合宿だの全裸だって散々見てきた。でも、田崎の全裸がどんなだったかなんて覚えちゃいないし、興味もない。俺は今、現役の時よりも細くなっていて、いわゆる細マッチョという状態だ。田崎だって似たり寄ったりのはず。そんな男二人で、何をどうすると言うんだ。  自分の想像に軽い眩暈を覚えつつ、和樹は部屋に戻った。 「カズ、入るぞ。」という声が聞こえた時には、もう宏樹は部屋の中にいた。いつものことで怒る気にもならない。ずかずかと部屋の真ん中を陣取ってあぐらをかく。田崎とは違い、物が散乱している和樹の部屋はただでさえ狭苦しいのに、図体の大きな宏樹がいるとますます狭く感じる。「おまえ、なんかあったの。」

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