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第21話 兄⑤

「良い奴なんだよ。もちろん、友達としてだけど。だから、もう会わないと決めつけないで、これからだって会える時は会えばいいと思うんだ。でも、嫌だって。」 「振られた相手に会いたい奴はいないだろうよ。」 「でも、ずっと仲良くやってきたんだ、俺ら。そこに戻るだけだろ。それに、本当に俺のこと好きなんだったら二度と会えないより、友達としてでも会えるほうがよくない?」 「カズ、おまえなあ、結構残酷なこと言ってるよ。もっと相手の気持ちを考えてやれや。」元カノに言われたことと同じようなことを指摘され、そんなに自分はひどい人間なのだろうかと落ち込む。「告白したらうまくいくかもしれない、がんばれば振り向いてもらえるかもしれない、そういう可能性がある相手なら、このタイミングで告白なんかしないんじゃないか? おまえに拒否されることをわかっていて、それでも言わずにはいられなかったんだろう。俺は男に告白したこともされたこともないし、そいつの本当の気持ちなんてわからないけど、相当勇気が要ることだったのはわかるよ。もしおまえがそいつの気持ちを少しでも汲んでやる気があるなら、会いたくない気持ちを尊重してやったほうがいいんじゃないのか。それに、何年かして、お互いの状況も気持ちも変わったら、またふつうに会える日も来るかもしれない。そのぐらいのながーい目で考えてやればいい……と、にいちゃんは思う。」 「……兄貴、すげえな。俺、兄貴から恋愛のことで教えてもらうことがあるとは思わなかった。 「馬鹿にするなよ、俺だって一部のマニアにはモテるんだ。」今日はやたらと馬鹿馬鹿言われる日だ、と和樹は思った。田崎にキスした時にも言われた。  キスした、時にも。 「あ。」

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