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第23話 兄⑦
「違うだろ、全然。男なんだよ? そんな風に思ったことないよ」
「じゃあ、今からそんな風に考えてやれ。決死の覚悟で告白してきた奴を、おまえの半端な同情で傷つけたらダメだ。最初にはねつけることができなかったんなら、一日でも二日でもいいからそいつのために時間を作って、ちゃんと正面からそいつの気持ちを受け止めてやって、それで、ちゃんと諦めさせてやれ。」
「そんなこと言ったって、具体的には何をするんだよ。」
「デート。」
「はあ?」
「俺な、そういうことあったんだ。好きだった女の子に告白して、ま、振られたんだけどな、一日でいいから二人で会ってくれってお願いして、デートしてもらった。手も握らなかったけど、うん、ちゃんと吹っ切れたよ。だから、その子には感謝してるし、その子のこと好きになって良かったなって今でも思える。そういう気持ちの落とし所ってのは、大事だと思うんだ。特にそいつみたいな奴は余計にちゃんとしてやらんと、その後の人生、人を好きになれなくなっちまったりする。おまえも、そいつにそんな人生歩ませたくないだろう?」
「今日の兄貴はすげえな。」
「これでも教師になろうって人間だからな。」
「兄貴の生徒は幸せだな。生徒にモテモテだよ、きっと。」
「そんなわけないだろ、第一、男子校だぞ。」
「あのな兄貴、いま俺達、何の話をしていたと思ってるの。」
「あっ……。」宏樹はまた目をまん丸くした。
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