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第27話 リョウヤ④

 行先は、田崎の家。  家の前まで着くと、二階に目をやる。窓が開いていて、風でカーテンが揺れているのが見えた。インターフォンを鳴らすと、田崎本人の声での応答があった。しかし、和樹が名乗ると無言になった。しばらく待っても反応がないので、窓に向かって大声で呼んでやろうかと思った矢先、ドアがわずかに開いた。 「何。」 「話がある。」 「いいって、もう。悪いけど帰って。」 「入れてくれなきゃ大声出すぞ。」 「小学生かよ。」田崎は渋々ながらもドアを全開にしたので、和樹はすかさず中に入り込み、「なんで学校来なかったんだ。」と言った。 「髪、切りに行った。」言われて初めて、田崎の髪がずいぶんとさっぱりしていることに気がついた。 「学校終わってからでも行けるだろう。」 「いいだろ、別に。」 「それに、」和樹は何故だか無性に腹が立ってきた。「リョウヤってどんな字だよ。」 「は?」 「おまえの名前だよ。」 「涼しい……に、弓矢の矢、だけど……。」 「なんでほかの奴が涼矢で、俺は田崎って呼んでるんだよ。」 「知るかよ。ていうか、上がるならさっさと上がれ。」田崎が振り向きもせず、二階に上がっていく。和樹は靴を雑に脱いで、急いでその後に続く。 「涼矢。」和樹は先を歩く田崎の名を呼んでみた。 「なんだよ、さっきから。」 「いいだろ、俺が涼矢って呼んだって。」 「意味わかんねえ。」涼矢が先に部屋に入り、昨日と同じく、ベッドに腰掛けた。和樹は、その隣には座らず、床にあぐらをかいて座った。ちょうど昨日の宏樹のように。和樹は涼矢を見上げる格好となった。 「それで、なんなの。」涼矢は和樹を見ようとはせず、斜め下方を見ている。そこには何もないけれど。 「昨日、俺なりに考えた。真剣に、だ。おまえのこと。」涼矢の姿勢は変わらないが、顔がこわばったのがわかった。「結論から言うと、やっぱり、無理。俺は男を恋愛対象にはできない。でも、昨日、おまえから好きだって言われた時、気持ち悪いとか迷惑とか、そういう風には全然思わなかったし、今も思ってない。」和樹は深呼吸した。ついでにもう一回。「一つ、提案がある。」 「提案?」涼矢がやっと和樹を見た。

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