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第43話 キスの先①
「涼矢、むっちゃエロい。」と和樹が涼矢の耳元に囁いた。
「ざけんな。」と涼矢が真っ赤な顔で言った。
「俺のこと好き?」
「聞くな。」
「言って。好きって。」
涼矢は和樹と抱き合ったまま、でも、顔はそむけて、「好き。」と言った。
「もういっぺん言って。」
「好き。」
「ああ、もう。」和樹は苛立ちを隠さず、荒々しく涼矢を押しやった。「無理。だめだわ、マジで。」
「当たり前だろ。こんなの、気持ち悪いに決まってる。」悲しげに涼矢が言った。
「違う、そっちじゃない。逆。」
「逆?」
「あがらせてもらうぞ。」和樹は靴を脱ぎ捨てて、勝手知ったる二階の涼矢の部屋に向かった。涼矢もすぐに追いかけた。階段を登りきったところで追いついたかと思うと、和樹にまた抱きすくめられた。すぐ背後は階段で、ここでバランスを崩したら二人とも転がり落ちてしまう。
「危ないよ。」と涼矢が言う。
「うん。もう、後ろはないな。」和樹は涼矢にまたキスした。「進むしかないけど、いい?」
「意味わかんねえ。」
和樹は涼矢の手首をつかみ、部屋の中までひっぱっていくと、ベッドの上に放り投げるようにして手を離した。涼矢はベッドの上に、倒れこそしないものの、斜めに座りこむような姿勢になった。
「涼矢、童貞?」和樹はおろしたての黒いシャツのボタンを外し始めた。
「うるせえよ。なんだよ、いきなり。」
「俺は違う。それで、三ヶ月以上やってない。童貞を脱してから、こんなに長い期間やってないのは初めてなんだ。」
「何の話だっつうの。」
和樹は黒シャツを脱ぎ捨てると、涼矢を押し倒した。「本当にわかんないの? この状況、いくら童貞でも、わかるよね?」そう言って、涼矢の首筋に口づけた。
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