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第46話 キスの先④
涼矢は和樹の言いなりに、顔を上げて和樹を見た。「好き。」
和樹のそれがグッと硬くなる。「好きだよ、和樹。すげえ好き。大好き。」涼矢は今にも泣きだしそうだった。和樹は涼矢の頭をつかむようにして自分に引き寄せ、かみつくようなキスをした。その間にも、涼矢は和樹のそれを刺激し続ける。和樹はじれったそうに自分でパンツを脱いで、くるぶしにひっかかったそれを反対の足でベッドの下に落とす。涼矢は両手で露わになった和樹のそこをしごいた。先端から溢れてくる先走りの液体を塗りつけるようにすると、くちゅくちゅと音を立てた。
和樹が涼矢の耳元で言った。「やべ、イキそう……。出していい?」
「うん。出して。」
和樹は小さく呻くと、涼矢の手の中で果てた。涼矢はティッシュで手を拭った。和樹は涼矢にキスをして、そのまま雪崩れるように涼矢をベッドに押し倒した。それから二人は抱き合い、何度もキスをした。
「やっちゃったな。」とベッドで並んで寝たまま、和樹が言った。
「後悔してるんだ?」
「するかよ。」
「俺は、ちょっとしてる。」
「えっ、そうなの?」
「俺としては、もっとこう、ソフトランディングというか。フェードアウトというか。そんな感じで、和樹のこと、忘れるつもりだったから。」
「ああ、これは、忘れられないよねえ。なんたって涼矢の初体験……あ、でも。」和樹は涼矢のほうを向いた。「やっちゃっては、ないよね?」
「はい?」
「だって、さっきのは、セックスじゃないよ。」涼矢は反応に困り、黙るしかない。「どうする? この機会に、童貞、捨てちゃう?」
「やめろよ、馬鹿。」
「はい、出ました、涼矢の馬鹿呼ばわり。俺のことそんなに馬鹿馬鹿言うの、涼矢ぐらいだよ。」
「馬鹿なことを言うからだ。」
「そうかな。涼矢は、俺としたくないの?」
「人の弱みにつけこむような言い方するなよ。おまえは、俺としたいの?」
「うん。したい。」
「あっさり言うなよ、馬鹿。」
「ほら、また。」
「興味本位なんだろ。」
「そこがよくわかんないんだよね。でも、誰でもいいわけじゃないよ。涼矢だからしたいんだよ。そのへんを確かめてみる意味でも、一度やってみたらどうかなと。」
「一度やってみて、やっぱり男はダメだって結論が出たら、俺の立場はどうなるわけ?」
「でも、それは、逆もあると思わない? 涼矢だって、一度やってみたら、俺のこと好きだと思ってたけど違ったみたいとか、やったら気が済んだからもういいや、ってなる可能性もあるでしょ?」
「ねえよ。」
「即答したね。」
涼矢はムッとした声で言う。「三年間、好きだった奴、一度やりゃおしまいなんてこと、あるわけない。」
「うっわ、愛されてんな、俺。」
「茶化すなよ。」
「悪い。」和樹は涼矢の頬にキスした。「どうしよ、マジで可愛いな、涼矢。やっぱり俺も好きになったかも。」
「やりたいだけだろ。」
「好きな相手を抱きたいって思うのは、自然なことだよ?」和樹は涼矢の首筋にキスした。そして、片手で再び涼矢の体をまさぐりはじめた。
「おい、勝手に始めるな。」涼矢は半身を起こし、和樹を組み伏すような姿勢を取った。「それから、なんで、そっちが抱く前提なんだよ。おまえの理屈で言ったら、俺が和樹を抱いてもいいよな?」
「お、盲点。」和樹は両手を広げた。「いいよ。抱いてよ。」
「馬鹿。」涼矢は和樹から体を離し、ベッドの端に背中を向けて座った。「できるか、そんなこと。」
「なんで?」
「汚点になる。男と寝たなんて。俺、和樹の黒歴史になりたくない。」
「寝たら、俺は涼矢の汚点になるの?」
「違うよ。俺は、好きだから。俺が、勝手におまえのこと好きなだけだから。」
和樹も上半身を起こし、涼矢の顔を無理やり振り向かせた。「なんでそれを、そんな泣きそうな顔で言うんだ?」
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